ABAS Article List 2012 in APA Style


Oki, K. (2012). A Japanese factory in Thailand: Seeking acceptance of kaizen activities. Annals of Business Administrative Science, 11, 55-63. doi: 10.7880/abas.11.55 (Available online October 28, 2012)

タイの日系海外工場の現場作業員の改善活動の導入に関して、3年間の変化を観察する深いフィールド調査を行った。その結果わかったことは、改善活動が成果を挙げるには、まず、(a)トップマネジャーのコミットメントが必要であること。さらに、改善活動の導入期・推進期において好意的に受け入れられることが重要なので、(b)現地文化に合わせた改善活動の推進が必要になること。そのためにとられた方策は、まず1年目の導入期には、タイの文化、タイの陽気さに合わせ、改善活動を「楽しい(funny)」ものと認識させることであった。その上で、2年目以降、より成果に重点をおいたシフトチェンジを行っていた。もし1年目からコスト削減を求めれば、好意的に受け止められず、改善活動が浸透しなかったかもしれない。つまり、(c) 段階的な改善活動の変化が必要になる。

Sato, H. (2012). Routine-based view of organizational learning and mechanisms of myopia. Annals of Business Administrative Science, 11, 45-54. doi: 10.7880/abas.11.45 (Available online October 14, 2012)

Levinthal and March (1993)は、myopia of learningの概念によって、学習の負の側面を指摘した論文と位置付けられることが多い。しかし本来、myopia of learningとは、学習により、explorationよりもexploitationが優先される傾向があるというだけで、そのこと自体が問題なのではない。ルーティンをベースとした組織学習観で考えたとき、組織の各階層において同時にexploration重視のメカニズムよりもexploitation重視のメカニズムが働いた場合に限り、myopia of learningは問題となるのである。

Fujimoto, T. (2012). Evolution theory of production systems. Annals of Business Administrative Science, 11, 25-44. doi: 10.7880/abas.11.25 (Available online September 25, 2012)

「生産システムの形成プロセス」の分析を通じて、トヨタの強さ(長期間にわたる高パフォーマンス維持)の源泉を明らかにする。 既存研究では、「トヨタシステム/トヨタ生産方式の仕組み」の研究、「トヨタの歴史」の研究は多かったが、両者を結びつけた研究は少なかった。それに対して本稿では、両者を結びつけ、さらに近年経営学で注目されている「製品アーキテクチャ」の視点を踏まえて分析することにより、従来から指摘されてきた「もの造り能力」「改善能力」に加えて、「進化能力」の3階層の組織能力を想定することで、はじめて、トヨタの強さの“真の源泉”を説明できることを示す。

Kuwashima, K. (2012). Product development research cycle: A historical review 1960s-1980s. Annals of Business Administrative Science, 11, 11-23. doi: 10.7880/abas.11.11 (Available online September 25, 2012)

新製品開発の実証研究は、体系的な研究がスタートした1960年代には成功プロジェクトのプロフィールを包括的に分析し、普遍的な成功要因を明らかにする「グランド・アプローチ」だった。1970年代には製品開発の特定の側面(テーマ)に焦点を絞って分析する「フォーカス・アプローチ」が台頭し、さらに1980年代後半には製品開発のプロセスに焦点をあて、そこでのマネジメントとパフォーマンスとの関係を詳細に分析する「プロセス・アプローチ」が現れた。このように、ほぼ10年サイクルで新たな研究アプローチが台頭し主流が変わる点が新製品開発研究の特徴である。

Takahashi, N., & Inamizu, N. (2012). Mysteries of NIH syndrome. Annals of Business Administrative Science, 11, 1-10. doi: 10.7880/abas.11.1 (Available online September 25, 2012)

Katz & Allen (1982)はNIH症候群を検証した論文として引用されることが多いが、実際には、1)何の傾向も見られない散布図への安易な平滑化法の適用、2)恣意的な切片値の設定、によって導出されたものだったという問題点があり、検証されたとは言い難い。しかし、一番のミステリーは、NIH症候群は通常「自前主義」のことを指すと考えられているが、実は、Katz & Allen (1982)では、プロジェクト・メンバーの在職年数の長期化によって引き起こされるパフォーマンスの低下のことを指していたということである。にもかかわらず、多くの研究者が自前主義を唱えた原論文だとして引用し続けているのは不思議である。


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