ABAS Article List 2017 in APA Style
Hamamatsu, S. (2017).
Facade mother factory for correspondence of customer’s mother factory system.
Annals of Business Administrative Science, 16(6), 301-310.
doi: 10.7880/abas.0171015a
Download (Available online November 29, 2017)
マザー工場制は、日本の製造業企業の国際分業体制として広く普及しているとされる。しかし、本当にそうなのだろうか。本稿では、顧客であるセットメーカーからの要求に応じて、サプライヤーが「建前としてのマザー工場」をもっている事例を示す。この「マザー工場」は、先行研究がいうところの a unit that continuously supports overseas factories ではなかった。海外自社工場に対してではなく、顧客である日系企業に対して、技術支援サービスを提供するために、建前として必要な「マザー工場」であった。
Akiike, A. (2017).
Establishing Galapagos ke-tai's dominant industrial design.
Annals of Business Administrative Science, 16(6), 287-300.
doi: 10.7880/abas.0170916a
Download (Available online November 8, 2017)
日本の携帯電話産業では、メール機能が特に重視されるようになる中で折りたたみ型がドミナント・インダストリアル・デザインとして選択されるようになり、折りたたみ型を積極的に導入したNECが大きなマーケット・シェアを獲得した。その結果、21世紀初頭には、ガラパゴス携帯と呼ばれる日本独自なドミナント・デザインが形成された。しかしながら、このドミナント・インダストリアル・デザインは、ガラパゴス携帯の機能面とともに、日本の携帯電話産業がスマートフォンへ移行する際の妨げとなった。つまりドミナント・インダストリアル・デザインが、企業の競争的位置付けを決めたのである。
Mitomi, Y. (2017).
What is marketing time pressure?
Annals of Business Administrative Science, 16(6), 275-285.
doi: 10.7880/abas.0170925a
Download (Available online October 26, 2017)
制限時間がある場合の購買行動は、制限時間のない場合の購買行動とは異なる。それは制限時間の中で、消費者が圧力を感じているからである。この状態は「時間圧力」と定義されている。本稿では、時間圧力に関する先行研究の手法と結果を整理したところ、(a)制限時間の影響は調べていても、そもそも時間圧力を直接測定してきたわけでなく、また(b)その制限時間もせいぜい数秒から数分と短く、マーケティングの実務的に意味があるかは不明である。時間圧力という用語自体は使い古されてきた感があるが、時間圧力に関するマーケティング研究は、これからが期待される未知の研究領域といえる。
Sato, H. (2017).
Strategic consistency revisited: From resource allocation to temporal continuity.
Annals of Business Administrative Science, 16(6), 265-273.
doi: 10.7880/abas.0170921a
Download (Available online October 19, 2017)
経営戦略論では、かつては資源再配分の際の戦略的一貫性が問われていた。しかしダイナミック・ケイパビリティが脚光を浴び、フレキシビリティが重視されるようになる中で、ある意味当然視されてきた戦略的一貫性は影が薄くなった。しかし、近年になると、今度は、組織の時間的連続性を表す概念として、組織アイデンティティに近い意味で戦略的一貫性が再び使われ始めた。
Takahashi, N. (2017).
Checking firms' life spans expected 30 years ago.
Annals of Business Administrative Science, 16(6), 257-263.
doi: 10.7880/abas.0170919a
Download (Available online October 17, 2017)
今からちょうど30年前の1987年、「会社の寿命30年説」が話題になっていた日本で、「会社の寿命は30年と言われていますが、30年後、あなたの会社が生き残っている確率はどのくらいだと思いますか?」という質問を組み込んだ質問票を使い、日本の大企業11社のホワイトカラーの調査をして575人から回答を得た。その時の「確率」の平均は72%だった。30年後の2017年、575人中127人が所属していた会社2社は生き残れなかった。つまり78%は生き残ったことになる。
Nakano, K. (2017).
A history of Japanese venture businesses.
Annals of Business Administrative Science, 16(5), 243-255.
doi: 10.7880/abas.0170112a
Download (Available online August 31, 2017)
日本では、戦後四半世紀の間、諸外国でのスタートアップの議論とはかけ離れたところで中小企業が論じられてきた。戦後しばらくは中小企業の印象が悲観的な二重構造論が盛んであり、その後の中堅企業論も、スタートアップに光を当てるとまでは言えなかった。しかし1970年代に入ると、米国の影響を受けて、和製英語“ベンチャー・ビジネス”の下に、ベンチャー・キャピタルを中心としてスタートアップに対する潤沢な資金供給が始まり、スタートアップに対する期待感・待望感を込めたベンチャー・ビジネス論が展開されるようになった。
Fukuzawa, M., & Inamizu, N. (2017).
Multi-functional factories: Survey study on Japanese electric and electronics companies.
Annals of Business Administrative Science, 16(5), 229-241.
doi: 10.7880/abas.0170421a
Download (Available online July 31, 2017)
日本の電機産業に属する国内事業所を対象とした質問紙調査の結果、海外に生産機能を移管する動きが多いにも関わらず、(1)生産機能を高程度に完結して行える国内拠点が約90%である。(2)設計機能については生産拠点で完結して行える程度が高い拠点が約54%、低い拠点が約20%と混在している。(3)設計・製造技術・生産といった複数の機能を完全に完結して行える国内生産拠点の方が、そうではない生産拠点に比べて、@ライバル企業に対して、納期の正確さや迅速さ、市場ニーズへの対応力という点で優れており、A自社の中国・ASEANの生産拠点に対して、新製品の提案・開発力の点で優れている。このことは、複数の機能を完結して行うことができる生産拠点は、自社の海外拠点よりも「新製品の提案・開発」における優位性が高いことを示唆している。
Ichikohji, T., & Katsumata, S. (2017).
Multiple information devices users in the era of digital convergence:
The relationship between YouTubers and YouTube viewers.
Annals of Business Administrative Science, 16(5), 214-228.
doi: 10.7880/abas.0170329a
Download (Available online July 27, 2017)
デジタル・コンバージェンス時代到来の予言は、消費者の扱う情報機器の収斂を想起させるが、現実には情報機器の多様化が進んでいる。本研究では、動画共有サービスYouTubeを利用するスマートフォンユーザ(N=1000)を対象にして調査・分析を行った結果、(1)多様な情報機器を扱うユーザは、そうではないユーザと比べて、動画投稿も動画視聴も活発にする傾向がある。(2)多様な情報機器を使って動画投稿をよくするユーザと、動画投稿をせずにスマートフォンばかりを長時間使っているユーザに分化する傾向がある。すなわち、多様な情報機器を持つユーザの方が活発に情報機器を使いこなしていることが明らかになった。
Takahashi, N., & Kikuchi, H. (2017).
Rayleigh criterion: The paradigm of photolithography equipment.
Annals of Business Administrative Science, 16(5), 203-213.
doi: 10.7880/abas.0170525a
Download (Available online July 13, 2017)
かつて半導体の光露光装置は、Rayleigh criterionを使って、解像度で技術的限界を迎えると予想されていた。ところが実際には、【鏡系/等倍/一括露光】から【レンズ系/縮小/分割露光】へとアーキテクチャが変わると、予想された解像度の限界を超えて光露光装置の微細化が進んだ。限界を予想した際に用いたRayleigh criterionを専門家達が繰り返し使い、今度は、解像度向上の方策についての “a set of recurrent and quasi-standard illustrations”が行われる。Rayleigh criterionこそ、Kuhn (1962)が “community’s paradigm”と呼んだものの典型であり、Rayleigh criterionに則って (a) NAを大きく、(b) 波長を短く、(c) k1 factorを小さくすることで解像度向上が実現されてきた。
Akiike, A., & Yoshioka-Kobayashi, T. (2017).
The power of existing design for establishing the dominant “industrial” design.
Annals of Business Administrative Science, 16(4), 189-202.
doi: 10.7880/abas.0170410a
Download (Available online June 9, 2017)
デジタルカメラは、当初V-memoやカメラ付きテレビとして開発が進められ、銀塩カメラとは異なる外見がデザインされていた。しかし画素の向上によりデジタルカメラが銀塩カメラと代替関係になってくると、「写真をきれいに撮る」ために必要な光学ズームや手振れ補正機能などの技術革新が進められると同時に、銀塩カメラと似た外見を採用することで、消費者に銀塩カメラと代替関係にあるとのフレーミングが行われた。こうして、銀塩カメラはデジタルカメラに代替されていったものの、銀塩カメラにおいて採用されていた外見が最終的なデジタルカメラのドミナントな“インダストリアル”デザインとなった。
Suh, Y. (2017).
Organizations for global simultaneous new model launching:
Toyota’s GPC and Hyundai’s pilot center.
Annals of Business Administrative Science, 16(4), 177-188.
doi: 10.7880/abas.0170405a
Download (Available online June 7, 2017)
グローバル生産が増えるにしたがって、グローバルに新モデルを同時にどう立上げるのかが問題となる。トヨタ自動車と現代自動車は、異なる生産方式を持っていながら、グローバル新モデル同時立ち上げの問題を解決するために、ほぼ同時期に類似の機能をもつ組織を設立した。トヨタ自動車のGlobal Production Center (GPC)と現代自動車のパイロットセンターである。どちらも従来の量産ラインとは離れてパイロット生産ラインをもつ新組織だった。ただし、マザー工場制をとるトヨタのGPCは、本国工場の補完的役割を担っているのに対し、モデル工場制の現代は、パイロットセンターを本国工場から独立して機能させようとしたという違いがある。トヨタは競争力のある本国のマザー工場の負担を減らすための対応であり、現代は競争力の源泉となりにくい本国工場から距離を置くための対応だったのである。
Min, S., & Song, W. (2017).
Customer scope and supplier performance: The Japanese automotive industry.
Annals of Business Administrative Science, 16(4), 165-176.
doi: 10.7880/abas.0170426a
Download (Available online June 6, 2017)
Nobeoka, Dyer, and Madhok (2002)は、1995年の日本の自動車部品サプライヤーのデータを使って、日本の7つの自動車組立メーカーに対して、(1)部品の納入先自動車組立メーカーの数、(2)自動車組立メーカー比率のハーフィンダール指数でみた集中度を測定し、納入先自動車組立メーカー数が多く、集中度が低いほど、サプライヤのパフォーマンス(営業利益率)が高いと結論している。本研究はNobeoka et al.(2002)の分析モデルを踏襲し、1995年に加えて、1985年と2005年のデータについての追試を行った。その結果、1985年と1995年のデータではNobeoka et al.(2002)と同様の結果となったが、2005年のデータでは有意な関係は得られなかった。さらに、(A)納入先自動車組立メーカー数が3社以上と(B)3社未満の2群に分けて営業利益率を比較して見ると、1985年と1995年は(A)群の営業利益率の方が有意に高かった。これに対し、2005年には有意ではないが、むしろ(B)群の営業利益率の方が高かった。サプライヤのパフォーマンスと納入先自動車組立メーカー数や集中度との相関は、何らかの先行変数が存在するために生じる疑似相関の可能性が高い。
Inamizu, N., & Fukuzawa, M. (2017).
New product introductions and activation of shop floor organizational communication.
Annals of Business Administrative Science, 16(4), 149-163.
doi: 10.7880/abas.0170313a
Download (Available online May 12, 2017)
日本の電機産業で、競争力を維持している工場では、工場トップが新製品の提案や投入をして、現場を活性化させていた事例がある。つまり、新製品の投入が、現場組織のコミュニケーションを活性化するのである。そこで、質問紙調査のデータを用いて、現場組織の「風通し」(コミュニケーション活性化に関する指標)について分析したところ、風通しとQCDF(品質、コスト、納期、柔軟な生産)の間には相関が見られなかったが、風通しと「新製品の投入回数」及び「新製品の提案/開発」の間には、正の有意な相関があった。実際、新製品投入回数、新製品提案で上位の工場では風通しが良かった。このことは、工場トップの新製品提案や新製品投入といった行動や施策が、現場組織のコミュニケーションを活性化させることを示唆している。
Wada, T. (2017).
History of Japanese role-playing games.
Annals of Business Administrative Science, 16(3), 137-147.
doi: 10.7880/abas.0170228a
Download (Available online April 19, 2017)
生物は環境に適応した個体が生き残る進化により、多様な種へと分化していく。同じく、製品も国ごとの環境に適応することにより、全く違った特性をもった製品へと進化する。本稿では、同じルーツを持ちながら、欧米と日本で異なる製品へと進化したCRPG (Computer Role-playing Game)について紹介する。欧米において、CRPGはTRPG(Table-top Role-playing Game)をビデオゲーム化した製品として誕生した。以後の技術発展において、開発にTRPGファンが多く関与し、TRPGと同質の「面白さ」の再現が目指され、「自由な行動の選択によるストーリー展開」や、「仮想世界のリアルなシミュレート」が重視された。一方、日本においては欧米のCRPGが移入されるかたちでCRPGの普及がはじまった。TRPGではなく、CRPGに最初に触れた結果、@当時のCRPGの技術的限界による「固定されたストーリー展開」、A「経験値を貯め、レベルを上げてcharacterを成長させるシステム」という、RPGの本質とは異なる要素が、「面白さ」として受容された。これに、B日本のマンガ・アニメ文化に影響されたアニメ的なキャラクターデザインを加えたものが、日本におけるCRPGのスタンダードとして普及していく。この結果、TRPGや欧米のCRPGと異なる「面白さ」を追求する、JRPG(Japanese Role-playing Game)という、独立したジャンルへと進化していくことになった。
Kuwashima, K. (2017).
How can a company continue an unprofitable business? Case study of a Japanese functional chemical company.
Annals of Business Administrative Science, 16(3), 125-135.
doi: 10.7880/abas.0170227a
Download (Available online April 13, 2017)
競合他社の撤退が続くような赤字のプロジェクトに投資を続けるのはなぜだろうか。電子機器材料の1つである2層CCLの市場では、多くの企業が撤退した。その中で、10年以上赤字が続いたにもかかわらず、事業を継続した新日鉄化学が、大きな成功を収めた。他の競合企業と同様に、新日鉄化学でも、2層CCLに対する研究開発投資の中止が何度も検討された。最終的に、投資継続の判断が下されたのは、技術評価に際して、標準的な社内評価に加えて、潜在的主要顧客による評価を重視する判断システムを採用していたからであった。
Kosuge, R. (2017).
Market orientation and kaizen readiness in the automobile dealership context.
Annals of Business Administrative Science, 16(3), 115-124.
doi: 10.7880/abas.0170201a
Download (Available online April 8, 2017)
Kosuge and Takahashi (2016) による発見と既存文献にもとづいて、「市場志向は改善につながる」という仮説を立て、「改善意識」を尺度化して、ある自動車ディーラー企業の54店舗の全営業パーソンの回答を用いて仮説の検証を行った。その結果、市場志向は確かに改善意識と強い正の相関があることがわかった。さらに、市場志向と改善意識のそれぞれについて中央値で低群・高群に分け、2×2のクロス表を作ったところ、これも仮説を支持していたが、市場志向が低く、改善意識が高い4店舗の業績が高いことが明らかになった。これらの店舗についてさらに詳細に調べると、旧来の属人的な営業で十分な売上を達成できていたために、市場志向への転換が進まないことが明らかになった。
Takai, A. (2017).
Analyzing the phenomenon of a "shake-out."
Annals of Business Administrative Science, 16(3), 103-114.
doi: 10.7880/abas.0170222a
Download (Available online April 7, 2017)
ドミナント・デザインの出現の前後では、企業数が激減する「シェイク・アウト」という現象が起こるとされている。ところが、日本のオンライン証券業界では、シェイク・アウトはみられなかった。その理由は、ドミナント・デザインを生み出し、「唯一の勝ち組企業」といわれる松井証券以外の会社は、証券系のシステムを構築する大手2つのベンダーのいずれかのパッケージ・システムを導入したために、製造業ほどにはプロセスイノベーションの巧拙の影響を受けなかったからだと考えられる。その結果、松井証券のような高パフォーマンスは得られなかったものの、主要プレイヤーになれなくとも、存続することが可能だった。すなわち、製品ではなく、サービスのドミナント・デザインの場合には、その成
立が、企業退出の促進ではなく、抑制に働く可能性がある。
Suh, Y. (2017).
Knowledge network of Toyota: Creation, diffusion, and standardization of knowledge.
Annals of Business Administrative Science, 16(2), 91-102.
doi: 10.7880/abas.0170126a
Download (Available online March 24, 2017)
知識は企業の競争力の源泉となるものであり、企業の知識ネットワークの中で創造、伝播、標準化される。トヨタ自動車の日本国内知識ネットワークは複数の完成車工場、OMCD、GPCをノードとして構成される。知識は工場の現場で創造されるが、複数の完成車工場の間では、同階層の間で直接的に交流するネットワークを通じて知識が伝播される。その際に標準化は行われない。OMCDは標準化された知識と標準化されない知識の両方の伝播を行う。そして、GPCは知識を標準化することが主要な機能となっている。つまり、トヨタの国内知識ネットワークは、標準化の点で様々なレベルのノードを混在させることで、現場で創造される知識の多様化と標準化という矛盾した目的のバランスをとっているのである。
Takahashi, N. (2017).
Ownership structure follows managerial strategy: Management control revisited.
Annals of Business Administrative Science, 16(2), 77-89.
doi: 10.7880/abas.0170125a
Download (Available online February 24, 2017)
経済学のコーポレート・ガバナンスの議論では、株式の所有構造は説明変数として扱われる。それは、Berle & Means (1932)が、株式の広範な分散が専門経営者による経営者支配を進めたと説明する図式をそのまま引き継いでいる。ところが、Chandler (1977)が描く当時の電話や鉄道の事例を検討し直すと、電話では因果関係の矢印はむしろ逆向きで、優れた専門経営者が資本の大規模化を進め、その結果として、株式の分散化が進んでいた。鉄道では、そもそも管理業務はあまりにも複雑で、特別な技能と訓練を必要としたために、経営は専門経営者に任されたのである。要するに、所有構造は所有と支配の分離の説明変数ではなかった。実際、当時の日本では、所有の分散のない財閥で専門経営者が台頭していた。
Yamashiro, Y. (2017).
C to C interaction management: Cases of Harley-Davidson Japan dealers.
Annals of Business Administrative Science, 16(2), 67-76.
doi: 10.7880/abas.0170114a
Download (Available online February 22, 2017)
ハーレーダビッドソンジャパン傘下のディーラーの中から、販売業績が顕著に異なる2社を選んで事例分析を行ったところ、顧客間交流のマネジメントに大きな違いがあることが分かった。高業績ディーラーは、低業績ディーラーには見られなかった(i)顧客コミュニティに属する顧客の「初心者」「中級者」「上級者」へのグループ分け、(ii)顧客グループ別オリジナル・イベントの開催を実践していた。この(i)(ii)によって、「級内顧客間交流」のみならず「級間顧客間交流」も盛んになるために、顧客の車両乗り換え率が高くなり、販売業績が高くなっていた。
Shiu, J.-M. (2017).
The scope of support of toolkits in the smartphone industry.
Annals of Business Administrative Science, 16(2), 55-65.
doi: 10.7880/abas.0161122a
Download (Available online February 7, 2017)
半導体部品を使って製品開発を行う企業は、半導体部品企業が提供するツールキットを使用することで、製品開発におけるコンセプト創りから問題解決などの一連の試行錯誤の実験を独自で実施している。von Hippel (2001)によれば、ツールキットは、(a)試行錯誤などの学習、(b)モジュールやライブラリー、(c)設計の許容範囲、(d)言語や技能の親和性、(e)製品の高い製造性という構成要素から成っているとされる。本研究では(b)と(c)をサポート範囲と定義して、2010年代のQualcommとMediatekのツールキットのサポート範囲を比較する。その結果、製品開発力が低い新興ユーザーは、サポート範囲がより広いMediatekをより多く採用していたことが分かった。
Takai, A. (2017).
What kind of companies are withdrawing?:
The case of the Japanese online securities industry.
Annals of Business Administrative Science, 16(1), 41-54.
doi: 10.7880/abas.0161220a
Download (Available online February 3, 2017)
日本の黎明期のオンライン証券業界に参入していた70社を調べたところ、2001年以降は撤退が相次ぎ、2003年9月には56社へと大幅に減少していた。一見、厳しい生存競争による淘汰が起きたように見える。しかし、その撤退理由は経営不振ではなく、実際、撤退企業の経営不振度は高くなかった。確かに外資系は6社中4社(67%)が業務停止して撤退していたが、対照的に、国内金融機関系22社で業務停止した会社はなく、9社(41%)が合併によって減っている。つまり、少なくとも日本の黎明期のオンライン証券業界では、暗黙理に想定されている経営不振による淘汰ではなく、経営不振に陥る間もなく、ごく短期間に、金融再編などの別のメカニズムで会社数が減っていたのである。
Hamamatsu, S. (2017).
Host-country national expatriate.
Annals of Business Administrative Science, 16(1), 29-40.
doi: 10.7880/abas.0161223a
Download (Available online January 31, 2017)
海外子会社の経営人材に関する議論は、(a)本国人派遣社員と(b)現地人材の二者択一で論じられることが多い。一般的には、立ち上げ初期には(a)を派遣し、最終的には(b)を登用することが望ましいと主張される。しかし、本稿では、第三の選択肢(c)本社採用されて派遣された現地人材が、(a)(b)と比較して、現場課題の表出、本国との関係性を元にした事業展開で優位性があった事例を紹介する。現在、日本ではアジア地域からの留学生が増えており、日本企業に就職する留学生も増えている。アジア地域に進出する日本企業にとって、第三の選択肢(c)は現実味が増している。これまでの(a)か(b)二者択一の議論から脱し、(c)も含めた新たな人材戦略論の再構築が求められる。
Konno, Y. (2017).
Impact of "product scope" and "customer scope":
Suppliers’ diversification strategy and performance.
Annals of Business Administrative Science, 16(1), 15-28.
doi: 10.7880/abas.0161202a
Download (Available online January 24, 2017)
サプライヤーにとって、多角化戦略の最も重要な軸は、同一産業内での「製品範囲」の拡大と「顧客範囲」の拡大の2つである。本稿では、日本の自動車部品サプライヤー企業の多角化戦略を分析するにあたり、各部品取引を分析単位とし、まずは取引関係を大きく「既存取引」と「新規取引」の2つに分け、このうち後者についてはさらに、「製品範囲」と「顧客範囲」の二軸をそれぞれ「既存」と「新規」で2つに分け、計5つの取引カテゴリーに分類し、取引継続期間との間の関係について分析した。その結果、新規顧客・既存製品の取引カテゴリー、すなわち既存の部品を新規の顧客に納入するという取引パターンが、取引継続期間が一番長く、取引継続確率も一番高いことが分かった。
Inamizu, N., Sato, H., & Ikuine, F. (2017).
Five steps in sales and its skills:
The importance of preparing before an interview with customers.
Annals of Business Administrative Science, 16(1), 1-13.
doi: 10.7880/abas.0161125a
Download (Available online January 17, 2017)
本研究では、実務家に対する継続的な非構造化インタビュー調査を通じて、営業における行動の詳細を明らかにする。その結果、営業が、1)事前準備、顧客への2)アプローチ、3)ヒアリング、4)プレゼンテーション、契約の5)クロージングといった5つのステップから構成されることが明らかになる。また、この5ステップを元に、営業行動を測定する142項目からなる質問票を作成し、8社107名を対象に調査を行った。その結果、成績上位者と下位者で差異の見られる項目が、ヒアリングよりも前の段階、とくに事前準備の段階に多い傾向が見られることがわかった。このことは、営業における事前準備の重要性を示唆していると言える。Rentz et al. (2002)の営業スキル測定尺度は、営業と直接関係ないものを測定したり、トートロジーに陥っている可能性があったりと問題がある。本研究の「営業の行動とその5つのステップに着目する」アプローチは、Rentz et al. (2002)の問題を解決できる可能性がある。
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