ABAS Article List 2019 in APA Style


Ichikohji, T. (2019). After price competition.
Annals of Business Administrative Science, 18(6), 277-288.
doi: 10.7880/abas.0191018a Download (Available online December 13, 2019)

一般に、市場が成長・成熟化し、製品がコモディティ化すると、価格競争で製品価格が低下していくと考えられている。しかし、デジタルカメラ市場では最初は価格が低下したが、その後上昇に転じた。低価格セグメントから高価格セグメントにマスが移ったからだけではなく、どの価格セグメントでも価格が上昇に転じていた。(a)低価格セグメントでは低価格製品企業が撤退し、残存企業がより高品質製品に注力することで価格が上昇に転じた。(b)高価格セグメントでは、主要企業の寡占化が進み、最高級製品の参照価格に見合った製品が市場に投入されることで、価格は上昇し安定した。(c)中価格セグメントでは、低価格セグメントからより高品質製品を開発し参入してきた企業、高価格セグメントから代替セグメントとして参入してきた企業の2種類の企業が参入することで価格が上昇した。

Takahashi, N. (2019). Japanese National Railways' financing schemes and bankruptcy.
Annals of Business Administrative Science, 18(6), 263-276.
doi: 10.7880/abas.0191117a Download (Available online December 13, 2019)

日本の戦前の鉄道事業(運輸省)は、戦後、1949年に日本国有鉄道(JNR)として公社の事業に移行し、やがて経営破綻した。その原因としては、鉄道の地位低下、人件費膨張、そして赤字ローカル線の存在が挙げられることが多い。しかし、直接の破綻原因は、JNRが1965年度から着手した第3次長期計画の資金調達スキームの失敗にあった。政府の補助金も財政投融資の増額も見送られ、政府保証のないより高金利の特別債が財投の枠外で大量に発行されたことで、1967年度には、利子及び債務取扱諸費は1,012億円となって、特別債による調達額1,040億円とほぼ肩を並べるまでになってしまった。つまり、特別債は鉄道債券の利子を支払うために発行されるような状態に陥ってしまったのである。こうして7箇年計画はわずか数年で破綻し、1969年度からは財政再建計画に変更された。

Iwao, S., and Kato, Y. (2019). Why can Toyota's Keiretsu recover from earthquakes quickly?
Annals of Business Administrative Science, 18(6), 251-262.
doi: 10.7880/abas.0191022a Download (Available online December 10, 2019)

トヨタとそのサプライヤーの長期的で安定的な取引ネットワークである系列は災害への対応においても優れた能力を発揮するといわれる。そもそもトヨタの系列では、長期の企業間でのカイゼンである企業間学習活動(自主研)によって系列企業同士の生産に関する知識が共有されていた。その上で、(A)平時の自主研ではフラットでお互いに頼み事をしやすい社外との人間関係が確立していた。(B)災害対応時には、誰がリーダーとなるかを明確に決めた階層的なリーダーシップの下でこうした知識や人材を活用するという“切り替え”が行われていたことがケース・スタディの結果として分かった。

Min, S. (2019). Strategic divergence of keiretsu: Toyota suppliers and Nissan suppliers.
Annals of Business Administrative Science, 18(6), 237-249.
doi: 10.7880/abas.0191025a Download (Available online December 6, 2019)

日本の自動車産業の部品メーカー系列の(a) 企業実績と戦略的行動である (b)顧客範囲と(c)製品の多様性は自動車会社によって異なるのだろうか? 本稿では(1)トヨタ系列のサプライヤーと非トヨタ系列のサプライヤー、ならびに(2)日産系列のサプライヤーと非日産系列のサプライヤーに分けて、メンバー企業サプライヤーの比較分析を行った。その結果、(a)トヨタ系列のサプライヤーは非トヨタ系列のサプライヤーより企業実績が高かったが、日産系列のサプライヤーと非日産系列のサプライヤーに差はなかった。(b)顧客範囲は、トヨタ系列のサプライヤーと日産系列のサプライヤーの両方ともに、それぞれ非トヨタ系列のサプライヤーと非日産系列のサプライヤーより高かった。(c)製品の多様性は、トヨタ系列のサプライヤーが非トヨタ系列のサプライヤーより低いのに対し、日産系列のサプライヤーと非日産系列のサプライヤーは差がなかった。つまり、トヨタ系列のサプライヤーは、狭い製品多様性を保ちつつ顧客範囲を広げることで高い収益性を実現していたわけで、日産系列のサプライヤーとは戦略的行動が異なっていた。系列に関する既存研究では、系列による違いを重視してこなかったが、本稿の結果は、系列によって戦略的行動が異なる可能性を示唆している。

Byun, S. (2019). Managing tolerance stack-up through process integration team in steel industry.
Annals of Business Administrative Science, 18(6), 223-236.
doi: 10.7880/abas.0191002a Download (Available online November 20, 2019)

公差とは「製品の機能上許容しうる最大の寸法と最小の寸法の差」のことである。鉄鋼メーカーA社でも、教科書通りに、その幅内であれば、調整不要で工程間の引き渡しができるように、あらかじめ公差を設定し、管理をしてきた。ところが、自動車用鋼板のような高級鋼生産では、品質測定値が公差内に収まっていても(不良品判定には至らない)、公差の限界値に近いことが複数工程で続き、公差のスタックアップ・リスクが発生していた。それに対し、成功している鉄鋼メーカーB社では、一貫品質部が工程間で公差のすり合わせをしており、しかも公差とはいうものの、一点管理に近い厳格管理をしていて、教科書とはまるで異なる公差管理をしていた。

Akiike, A., Yoshioka-Kobayashi, T., & Katsumata, S. (2019). The dilemma of design innovation: Analysis of mobile phone’s design patent.
Annals of Business Administrative Science, 18(6), 209-222.
doi: 10.7880/abas.0190908a Download (Available online October 26, 2019)

Eisenman (2013)は、産業の中期と比べ、前期と後期はデザイン・イノベーションの重要性が高くなると主張した。そこで、多様なデザインが創出されていたフィーチャーフォン時代(1999-2008年)の携帯電話のデザイン特許の登録件数を調べてみると、確かに産業後期は増加傾向にあり、特に2007-2008年に急激に増加していた。しかし2003年以降の産業後期、引用されている数の平均は、引用している数の平均を下回り、デザイン・イノベーションは多くても、それは過去を踏襲したインクリメンタルなものだった。実際、デザイン関連特許の出願件数は、2004年をピークにそれ以降は減少をしていた。すなわち、産業後期は、デザイン関連技術の蓄積により多数のデザイン・イノベーションが生じるものの、影響力のあるデザイン・イノベーションは生まれにくくなるわけで、Eisenmanの主張には疑問がある。

Wada, T. (2019). The core rigidity of Japanese home video game companies.
Annals of Business Administrative Science, 18(5), 195-208.
doi: 10.7880/abas.0190921a Download (Available online October 10, 2019)

家庭用ゲーム機は、普及のために価格を抑える必要があり、高性能の半導体が高価であった1980年代〜1990年代は、性能が低かった。日本の家庭用ゲーム開発企業は、限られたハードウェアの性能のもとで面白さを作りこむ能力を構築していった。やがて2000年代にはいると、最新鋭のPCと遜色ないスペックの家庭用ゲーム機が登場した。そして、欧米市場において、高いハードウェアの性能を活かした家庭用ゲームソフトが消費者に求められるようになった。ここにおいて、PC向けのゲームの開発経験により、高いハードウェアの性能を前提とした開発体制や能力を構築していた欧米の家庭用ゲーム開発企業が活躍するようになった。一方、日本の家庭用ゲーム開発企業は、2000年以前に構築していた開発組織や能力がコア硬直性として作用し、北米をはじめとした世界市場における競争に苦戦することとなった。

Kuwashima, Y. (2019). The scope of motivation studies for (e)word-of-mouth.
Annals of Business Administrative Science, 18(5), 183-194.
doi: 10.7880/abas.0190913a Download (Available online October 9, 2019)

フェイス・ツー・フェイスで行われるWOM研究とインターネット上で見知らぬ人と行われるeWOM研究とでは、本質的な大きな違いがある。本稿では、特に動機に着目すると、受信者側の動機を主な論点としていた従来のWOM研究に対して、eWOM研究では、(a)発信者側の動機が論点とされ、(b)そこに経済的な動機も許容されるようになり、大きな違いあることがわかった。

Suh, Y., Mitomi, Y., & Sato, H. (2019). Resource-based venturing: The case of Venture Whisky.
Annals of Business Administrative Science, 18(5), 171-181.
doi: 10.7880/abas.0190817a Download (Available online October 3, 2019)

近年ジャパニーズウィスキーに対する世界的な需要が高まっている。そんな中、日本のベンチャー企業ベンチャーウイスキーは、2004年に創業し、2006年から輸出を始めたボーン・グローバル・カンパニーである。ベンチャーウイスキーがボーン・グローバルとなりえたのはリソース・ベースド・ベンチャーだったからである。ベンチャーウイスキーの創業者は、ファミリービジネスの経営権も資産も承継していない。しかし、一度は他人の手に渡ったウィスキーの原酒400樽を取り戻したことで、その原酒400樽を元にして起業した。このリソース・ベースド・ベンチャーこそが重要成功要因だった。つまり何もないところから起業するよりも、何らかの資源を元に始めた方が事業の成功確率は高いし、逆に、事業承継にこだわっていては、成功はおぼつかない。リソース・ベースド・ベンチャーにこそ成功の鍵がある。

Fukuzawa, M. (2019). Factory strategy: Research on the role of plant in the operations management.
Annals of Business Administrative Science, 18(5), 149-179.
doi: 10.7880/abas.0190731a Download (Available online September 6, 2019)

主要ジャーナル掲載のオペレーションマネジメント関連の論文では、(1)事業戦略と製造戦略のアラインメントの程度やプラクティスの実現度とパフォーマンスとの関係、(2)国際的な生産ネットワークにおける工場の役割、(3)オペレーション担当役員による事業戦略と製造戦略のすり合わせに関する実証研究が進められてきた。ただし、これらの研究は、企業の戦略上の強みとして工場の役割を位置づけているとはいうものの、突き詰めれば、「工場の役割は本社や事業部から与えられるもの」という視点に立っている。しかし、日本の国内工場がさまざまな課題に世界的にみて先進的に取組み続けてきた現象は、その範囲を超えていた。厳しい環境の中を生き残り、成長を続けていこうとする工場の役割や工場長の果たす戦略的行動と、工場で構築される組織能力の関係について、工場側の視点から探索的な研究を行うことが必要である。

Aizawa, A. (2019). Product identity leads to organizational activation in crisis.
Annals of Business Administrative Science, 18(4), 135-147.
doi: 10.7880/abas.0190725a Download (Available online August 9, 2019)

組織は、(1) 従業員が目的を共有していて、(2) その目的の達成に自発的に貢献しようとしている時に「活性化」していると言われる(Takahashi, 1992)。活性化している状態では(1)と(2)を満たすProblem Solverと呼ばれる人材が重要な役割を果たす。本稿で取り上げるA社は、業績的に危機だったために、(1)で企業のアイデンティティではなく、製品のアイデンティティを追求することで、従業員が自発性を発揮し、組織が活性化した。さらに製品のアイデンティティだったがゆえに、他社にも展開を始めている。

Huang, W. (2019). Management of exhaustion in continuous product development: The case of a mobile game company.
Annals of Business Administrative Science, 18(4), 123-134.
doi: 10.7880/abas.0190621a Download (Available online July 25, 2019)

モバイルゲームのような継続的な開発活動が特徴の製品の場合、(a)バグ対応の開発負荷に、(b)新規コンテンツの開発負荷が上乗せされ、開発現場が疲弊しがちである。本稿が取り上げる事例では、(a)一部のユーザーから指摘のバグ対応で現場が疲弊したが、バグの多くが特定のイベントやアイテムに関するものだったので、ゲームシステムに関連する緊急事態でない限り、迅速なアップデートはしないことにした。また、(b)PvE (Player versus Environment)のコンテンツ消費スピードが速いため、当初、新規コンテンツはPvE 70%、PvP (Player versus Player) 30%に配分していたが、PvEのコンテンツ消費スピードが想定以上に速かったことで現場が疲弊した。他方、PvPはユーザー生成が主なので、コンテンツの追加は頻繁ではないが、妥当性検証に時間がかかっていた。そこで、シミュレーションでユーザー対戦の一部を検証することで、検証時間を約35%短縮し、PvE 40%、PvP 60%に配分を変えた。(a)(b)により開発現場の疲弊感は解消されるとともに、(b)でソーシャル性の高いPvPの配分を増やしたことで、新規ユーザーの獲得と既存の課金ユーザーの収益化にも成功した。

Kosuge, R., & Shiu, J.-M. (2019). Creating retail customer experience through distribution of decision authority between headquarters and stores.
Annals of Business Administrative Science, 18(3), 113-121.
doi: 10.7880/abas.0190325a Download (Available online May 31, 2019)

顧客はたとえ満足していても、企業の意図にそぐわない経験をしているかもしれない。本稿では、自動車ディーラーの本部と46店舗の関係性の比較により、優れた顧客経験を生み出すために、タッチポイントに関する決定権限がどのように配分されるべきかを検討した。全般的にタッチポイントの決定権限は本部から店舗へシフトしていたが、顧客経験が優れる2店舗では、ブランドプロモーション系タッチポイントに関する決定権限の行使は実質的に本部が行なっていた。さらにこの2店舗は、対人系タッチポイントを、本部が構築したブランドプロモーション系タッチポイントへ適応させていた。つまり、タッチポイントに関する決定権限を、その権限行使のために不可欠な知識を持つ主体が行使しながら、ブランドの観点からタッチポイント間の一貫性を達成することが重要だと考えられる。

Takahashi, N. (2019). Owning a company: The Japanese experience.
Annals of Business Administrative Science, 18(3), 103-112.
doi: 10.7880/abas.0190422a Download (Available online May 23, 2019)

「所有物であれば何をしても自由である」と考えるならば、あなたの「所有」観は、あまりにも稚拙で幼稚である。これは、所有の対象が、動物であれ、物であれ、会社であれ、まったく同じである。所有者には責任がある。たとえオーナー経営者であっても、自分の会社だから何をしても自由というわけではない。それは会社の私物化であり、処罰されることになる。肝心なことは、自分が所有者だと名乗る以上は、所有者には責任があるという当り前の自覚を持つということなのだ。

Fukuzawa, M. (2019). Critique on the lean production system research.
Annals of Business Administrative Science, 18(3), 85-101.
doi: 10.7880/abas.0190403a Download (Available online May 15, 2019)

1990年代以降、リーン生産方式に関する研究では、効率的な生産組織が持つ特性リーンネスの測定尺度開発が進み、HPM調査やIMSS調査に起源を持つShah and Ward (2003,2007)が一つの集大成となっている。しかし、その説明力は必ずしも高くはない。一方、IMVP調査では、質問紙調査に加え、実際に各国の自動車メーカーの開発・生産現場)を訪問していたが、実は、複数の日本の自動車メーカーを比較すると、仮にリーンネス尺度にもとづけば高得点でJIT生産を実現していると判断されそうな現場であっても、その実現方法・やり方には違いがあった。大規模かつ国際的・産業横断的な質問紙調査だけでは、こうした違いを測定し検出することは難しく、そのことが説明力の低さに現れている可能性がある。またリーンネス尺度でパフォーマンスの差異を説明するアプローチには、国や産業の違いを超えた「ベスト・プラクティス・リーンな状態」が存在するというリーン仮説が背後にあるが、説明力の低さはリーン仮説の妥当性に疑問を抱かせる。

Nakano, K., & Ohara, T. (2019). Omiai: Japanese initial private offering.
Annals of Business Administrative Science, 18(2), 75-84.
doi: 10.7880/abas.0190212a Download (Available online April 13, 2019)

日本では古来、結婚相手を探す際に「お見合い」をする風習があった。本稿で取り上げる日本のInnovation Leaders Summitにおける大企業とベンチャー企業のマッチング事例は、まさに「お見合い」といっていいものだった。欧米型のマッチング事例とは異なり、参加する企業・経営者はお互いに提携経験があまりなく、仲介者もHolzmann, Sailer, and Katzy (2014)らが指摘するような強いコミットメントはしない。その代わり「お見合い」同様、仲介者は提携初心者の大企業・ベンチャー企業のプロフィールを交換させ、出会いの場を設定して引き合わせるだけなのである。

Sato, H. (2019). Using grounded theory approach in management research.
Annals of Business Administrative Science, 18(2), 65-74.
doi: 10.7880/abas.0190326a Download (Available online April 13, 2019)

マネジメントリサーチの分野で、多数派の仮説検証型の定量研究とは対照的に、定性的な理論構築型の研究を行う際、方法論的正当性を主張するために頻繁に引用されるのが、Glaser and Strauss (1967)を嚆矢とするGrounded theory approach (GTA)である。その後、GlaserとStraussが対立するようになったこともあり、GTAは3つのパースペクティブに分化した。そのうち最も多く引用されているのが、コーディングなどの分析手続きを詳細に規定するStrauss and Corbin (1990)であるが、引用する研究がこの特性を十分反映しているとは限らない。その結果、3つのパースペクティブの違いが、研究の方法論の違いに結びついているわけではないことが明らかになった。

Kuwashima, K. (2019). Classification for measuring the impact of open innovation on practice.
Annals of Business Administrative Science, 18(2), 51-63.
doi: 10.7880/abas.0190314a Download (Available online April 6, 2019)

Chesbrough (2003a)が提案したオープンイノベーションは、学会のみならす実務にも多大な影響を与えた。しかし、オープンイノベーションの定義が広く多義な一方で、Chesbrough自身がオープンイノベーション の具体例(オープンイノベーション・プラクティス(OIP))を明確に示さなかったために、実務家は多様な解釈をした。したがって、オープンイノベーションの実務に対するインパクトを正確に測定するためには、OIPをいくつかのタイプに分類する必要がある。本稿ではその分類法を2つ提案する。第1は、Chesbroughと実務家がOIPと呼ぶものが一致しているかどうかである。この視点によれば、OIPは、次の3つに分類できる: (a) Chesbroughも実務家もそれをOIPと呼ぶ、(b) ChesbroughはそれをOIPと呼ぶが、実務家は呼ばない、(c) ChesbroughはそれをOIPと呼ばないが、実務家は呼ぶ。(a)は明確にオープンイノベーションのインパクトと評価できる。一方、(b)(c)の解釈には注意が必要である。第2は、現在OIPとして実施されている活動に関して、それが (i) Chesbrough(2003)より前に開始されたのか、(ii) Chesbrough(2003)以後に開始されたのか、の区別である。(ii)はオープンイノベーションのインパクトと評価できるが、(i)は従来から行われていたプラクティスの呼び方を "OIP" と変えたに過ぎない。(i)をオープンイノベーションのインパクトに含めると、過大評価となる可能性がある。

Yamashiro, Y. (2019). Disincentives of organizational routines transfer: Case of adaptive radiation in a sales and marketing company.
Annals of Business Administrative Science, 18(2), 37-49.
doi: 10.7880/abas.0190303a Download (Available online April 3, 2019)

本稿が取り上げる営業組織変革の事例では、優れた成果をあげる組織ルーティンが形成され、他組織にも利用可能な形で見える化・標準化されていたにも関わらず、営業拠点間で移転しなかった。その原因は、「組織はKPIを達成すれば、その自律性が保障される」という営業組織のルールの存在だった。すなわち、各営業拠点がKPIを達成している好業績組織においては、各営業拠点は高い自律性を保障されているので、(a)独自に組織ルーティンを改善していい、(b)他組織の組織ルーティンを押し付けられない。つまり、好業績組織において、組織ルーティンは、(a)各営業拠点で独自進化し、(b)各営業拠点間では横展開しないという適応放散が観察された。

Inamizu, N., & Makishima, M. (2019). Non-territorial office with various zoning increases privacy: Implications for activity-based working.
Annals of Business Administrative Science, 18(1), 25-36.
doi: 10.7880/abas.0190121a Download (Available online February 15, 2019)

Allen and Gerstberger (1973)は、ノンテリトリアル・オフィスはプライバシーを改善したと報告しているが、実は実験後のオフィス・レイアウトを見ると、単にノンテリトリアル・オフィスにしただけでなく、多様なゾーニングがなされ、状況に応じてゾーンを選べるようになっていたことがわかる。このことに着想を得て、本研究では、インターネット調査により得られた6592名のデータをもとに、ノンテリトリアル・オフィスがプライバシーに与える影響および、多様なゾーニングの効果も分析する。分析の結果、1)ノンテリトリアル・オフィスそのものはプライバシーに大きな影響を持たないこと(ノンテリトリアル・オフィスそれ自体はプライバシーを改善も悪化もさせない)、2)むしろ多様なゾーニングこそがプライバシーを改善すること、3)さらに興味深いことに、ノンテリトリアル・オフィスにおいて、多様なゾーニングが全くなされていないとプライバシーは大きく悪化し、多様なゾーニングが徹底的に行われているとプライバシーは大きく改善すること、が明らかとなった。このような分析結果は、ノンテリトリアル・オフィスとプライバシーに関わる論争に一つの解決策を提示するとともに、最近出現しつつある新しいタイプのオフィス(アクティビティ・ベースド・ワーキングやアクティビティ・ベースド・オフィス)にも示唆を与えるものである。

Wada, T. (2019). Decline of business brings growth opportunities.
Annals of Business Administrative Science, 18(1), 13-23.
doi: 10.7880/abas.0181119b Download (Available online February 7, 2019)

中小企業(SME)の多くは、多角化や事業転換といった新規事業の立ち上げに消極的である。そんな中で、やまと興業株式会社および山口化成株式会社の2社では、tough times bring opportunityという慣用句のごとく、既存事業の衰退が、危機であると同時に、新規事業立ち上げの機会をもたらしていた。また、起業時の経験ではなく、起業後の第二の事業の立ち上げ経験が、以後のさらなる事業の立ち上げ意欲につながっていた。

Abe, M. (2019). Leader's episodic change and followers’ continuous change: The case of Rakuwakai Otowa Hospital.
Annals of Business Administrative Science, 18(1), 1-12.
doi: 10.7880/abas.0181206a Download (Available online January 21, 2019)

Weick and Quinn (1999) は、組織変革を扱った既存研究をレビューし、一時的変化と連続的変化という対照的な組織変革は、観察者の視点を反映していると主張する。すなわち、一つの組織変革を一時的変化としても、連続的変化としても説明・記述できるというわけだが、その具体的事例は知られてこなかった。本稿でとり上げる洛和会音羽病院の変革の場合は、リーダーが一時的変化として変革を説明するのに対し、それと同じ状況を、フォロワーである職員は連続的変化として説明していた。


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