15巻6号

2016年6月25日発行

オンラインISSN 1347-4448,印刷版ISSN 1348-5504
発行 特定非営利活動法人グローバルビジネスリサーチセンター(GBRC)

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< 査読つき研究ノート(オープンアクセス) >

海外グループ企業における初期流動管理の導入事例―海外での日本的生産マネジメントの展開

高梨千賀子

pp. 309-330

本稿は、アジア新興国で日本企業がマイナー出資をしている海外グループ企業 (自動車部品生産) において、初期流動管理という日本的生産マネジメントを導入する事例を取り上げる。「初期流動管理」は新製品の設計から量産までのプロセスでQCDを徹底的に検証するための管理であり、日本企業の競争力の源泉と見做されている。新製品立ち上げに際して必要となる同管理は、日本企業では柔軟に行うことができるが、海外拠点の既存組織においては、その実現が難しい。本稿では、初期流動管理を実施するために海外企業が直面した課題を明らかにし、さらに、ARC分析を用いて初期流動管理導入前後の組織を比較分析することで、課題解決法としての組織設計の在り方を検討した。その結果、マイナー出資の海外拠点で初期流動管理を有効に実施していくためには、1) 初期流動管理を組織構造上に明確に位置づけること、2) 意思決定に必要な情報の流れを構築すること、3) 初期流動管理業務を評価と報酬に反映させること、4) 複数の機能部署間にまたがる業務をコンカレントに全体最適できる経営者層のアーキテクト型リーダーシップ、の重要性が明らかになった。
キーワード:生産マネジメント、初期流動管理、マイナー出資、戦略と組織の整合性

高梨千賀子 (2016)「海外グループ企業における初期流動管理の導入事例―海外での日本的生産マネジメントの展開」『赤門マネジメント・レビュー』 15(6), 309-330. doi: 10.14955/amr.150601

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< 大学院生のための研究入門 (1) >

経営史と社史―社史はどのように作られるか

粕谷誠

pp. 331-340

日本の社史は、社内に社史編纂委員会・社史編纂室が設けられ、社内で執筆され、著者が明示されず、会社が刊行するが、出版はされない、という例が多い。社外の専門家が執筆する場合も、奥付に名前が出ることは珍しい。ただし正史の社史の他に、普及版が刊行される場合は、著者名が奥付に明記されることが多い。これに対し、欧米の社史は、外部の専門家が執筆し、著者名が明記され、出版社から出版されるのが一般的である。ただし会社で原稿をチェックし、会社が意見を付けられるようになっている。さらに山一証券100年史の事例にもとづき、社史がどのように刊行されるかを述べる。
キーワード:経営史、社史、出版、印刷、物語

粕谷誠 (2016)「経営史と社史―社史はどのように作られるか」『赤門マネジメント・レビュー』 15(6), 331-340. doi: 10.14955/amr.150602

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< 経営学輪講 >

官僚制はイノベーションを阻害するのか?―経営学輪講 Thompson (1965)

岩尾俊兵, 前川諒樹

pp. 341-350

Thompson (1965) は、既存の官僚制組織が仕事を細分化・専門化させることで企業の生産性を向上させると同時に、仕事の過度な細分化を生じさせイノベーションを阻害する可能性があると指摘した論文である。しかしながら、Thompsonの議論は官僚制組織 (官僚的な組織) と創造性を単なる対立関係にあると想定したものではなく、官僚制組織にいくらかの修正を加えることで生産性と創造性が両立できるのではないかと論じている。たとえば、この論文では、官僚制組織において創造性を担保する役割がプロフェッショナルに求められており、イノベーティブな活動に従事するそのようなプロフェッショナルを処遇するには単線評価でなく総合評価がよく、仕事自体の面白さによって内発的動機づけが行われる必要があるという。
キーワード:innovation、組織構造、官僚制の逆機能、プロフェッショナル

岩尾俊兵, 前川諒樹 (2016)「官僚制はイノベーションを阻害するのか?―経営学輪講 Thompson (1965)」『赤門マネジメント・レビュー』 15(6), 341-350. doi: 10.14955/amr.150603

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