2巻9号

2003年9月25日発行

オンラインISSN 1347-4448,印刷版ISSN 1348-5504
発行 特定非営利活動法人グローバルビジネスリサーチセンター(GBRC)

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< 経営学研究法 >(オープンアクセス)

消費者行動のメカニズムを探る大量のミクロデータ分析の研究事例

阿部誠

pp. 375-398

需要過剰の成熟した経済社会では、単に質が高くて価格が適切なだけでは不十分である。個々の消費者(顧客)をよりよく理解し、彼らのニーズに細かく応え、それを超えた製品やサービスを提供しなければ、消費者に選択・購買してもらうことができない。この論文では、消費者レベルの大量のデータ、とくにスーパーマーケットで収集された世帯別購買履歴データに基づいて、ブランド選択における消費者行動のメカニズムを探る。まず、消費者行動理論の確率的効用最大化プロセスに基づいたブランド選択モデルで分析した後、それを理論やモデルの仮定を限りなく排除したノンパラメトリック・モデルによって検証する。そして、これを実務に有益な二つの方向に拡張したモデルを事例を使って紹介する。ひとつは、効果的なプロモーション活動を実践する上で有効な、消費者のマーケティング要因、特に価格や値引に対する非線形反応を探ったセミパラメトリック・モデル、もうひとつは、CRMのような顧客ごとにカスタマイズしたマーケティング活動に有効な個人別パラメータを組み込んだ階層ベイズ・モデルである。
キーワード:マーケティング、ブランド、消費者行動、データ、モデル、顧客

阿部誠 (2003)「消費者行動のメカニズムを探る大量のミクロデータ分析の研究事例」『赤門マネジメント・レビュー』2(9), 375-398. http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR2-9.html

PDFファイル AMR2-9-1.pdf (416KB)
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< 査読つき研究ノート >(オープンアクセス)

霧多布湿原トラストの成長軌道

松本渉

pp. 399-420

北海道のNPO法人「霧多布湿原トラスト」は、 2000人を超える会員数を抱えるなど広範囲の支持を集めるばかりか、数多くの賞も受けていて、その社会的意義も認められている上に、NPOとしては収入も多く経営的にも成功していると考えられる団体である。その秘訣は、法人化する以前の時期を含めた20年近くの間に様々なプロデュースがあったためであるが、その具体的内容と団体としての遍歴について述べる。
キーワード:霧多布湿原トラスト、プロデューサー、ナショナル・トラスト

松本渉 (2003)「霧多布湿原トラストの成長軌道」『赤門マネジメント・レビュー』2(9), 399-420. http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR2-9.html

PDFファイル AMR2-9-2.pdf (635KB)
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< コンピュータ産業研究会 >

光ディスク産業のビジネス・アーキテクチャその変遷

小川紘一

pp. 421-474

光ディスク産業では、CD系と非CD系(相変化記録やMO)とで競争が行われ、前者が圧倒的に勝利を収めた。CD系のビジネス・アーキテクチャがマーケティング主導であり、インストールド・ベースとの互換性を徹させたためである。後者の非CD系は、開発主導のビジネスであった。互換を無視してでも独自の規格を浸透させようと、国際標準化機構の舞台で覇権争いを繰り広げたがビジネスとしては成功せず、多くが市場撤退を余儀なくされた。 MOもインストールド・ベースが全く無い環境で始めた。開発主導型であったので市場を日本に絞り込み、まずはニッチ市場でユーザ・インフラ構築を最優先させた。商品開発は、互換性(媒体互換)を徹底させるマーケティング主導を貫いた。日本市場では広く普及し、高い利益率を誇ったが、ニッチ・ビジネスに留まっている。 インストールド・ベースとの互換性を重視すると、開発期間が短縮され、従来部品を使い回せるので大幅なコストダウンにつながり、市場参入コストが非常に安くて済み、在庫管理コストも少なくて済む。いいことばかりのように見えるが、ここから本質的な技術革新が起きないという問題も生じる。それ以上に深刻なのは、既存のインストールド・ベースとの互換性を守れば守るほどパソコン内蔵市場へのOEMしかビジネスの出口が無くなるという現実である。主要市場がパソコン環境に集中しているためであり、ここに互換・非互換が絡む深い問題が横たわっている。 日本企業の一部は、CD-R/RW媒体でブランドを生かすビジネス・アーキテクチャへと進化させて成功した。しかし互換性維持で成功するかに見えた大部分の装置メーカーは、モジュラー化が進むパソコンOEM市場で劣勢に立たされ、多くが撤退を余儀なくされた。DVDでもその兆候が見える。Post DVDであるBlu-rayやAODでも非互換か互換かの覇権争いが再燃した。日本の光ディスク業界は次々に次世代技術を生み出すが、これを高収益に結び付ける大きな仕掛け作りではまだ成功していない。産業再生には技術革新とビジネス・アーキテクチャ構築の両方の視点をもつ人材育成が求められ、Post DVDがその試金石となる。
キーワード:CD、DVD、Post DVD、MO、互換性、標準化、ビジネス・アーキテクチャ

小川紘一 (2003)「光ディスク産業のビジネス・アーキテクチャその変遷」『赤門マネジメント・レビュー』2(9), 421-474. http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR2-9.html

PDFファイル AMR2-9-3.pdf (1.127KB)
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