GBRCニュース   2003.09.29

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『赤門マネジメント・レビュー』 Vol.2, No.9 発行!! 

 

『赤門マネジメント・レビュー』 Vol.2, No.9が発行されました。

http://www.gbrc.jp/GBRC.files/journal/amr/index.html

目次と要約は下記の通りです。「研究会報告」は無料で会員以外にも公開してい

ますが、今回のコンピュータ産業研究会の報告は、要約も長いですが、本文も50

ページを越す大作です。枚数無制限ならではでしょうか。図表もふんだんに使わ

れ、フルカラーなので、とてもきれいです。ぜひオンラインジャーナルのもつ可

能性をお確かめください。

 

阿 部  誠 pp. 375-398 (804KB)

「連載:経営学研究法 消費者行動のメカニズムを探る

−大量のミクロデータ分析の研究事例−」

 需要過剰の成熟した経済社会では、単に質が高くて価格が適切なだけでは不十

分である。個々の消費者(顧客)をよりよく理解し、彼らのニーズに細かく応

え、それを超えた製品やサービスを提供しなければ、消費者に選択・購買しても

らうことができない。この論文では、消費者レベルの大量のデータ、とくにスー

パーマーケットで収集された世帯別購買履歴データに基づいて、ブランド選択に

おける消費者行動のメカニズムを探る。まず、消費者行動理論の確率的効用最大

化プロセスに基づいたブランド選択モデルで分析した後、それを理論やモデルの

仮定を限りなく排除したノンパラメトリック・モデルによって検証する。そし

て、これを実務に有益な二つの方向に拡張したモデルを事例を使って紹介する。

ひとつは、効果的なプロモーション活動を実践する上で有効な、消費者のマーケ

ティング要因、特に価格や値引に対する非線形反応を探ったセミパラメトリッ

ク・モデル、もうひとつは、CRMのような顧客ごとにカスタマイズしたマーケティ

ング活動に有効な個人別パラメータを組み込んだ階層ベイズ・モデルである。

キーワード:マーケティング、ブランド、消費者行動、データ、モデル、顧客

 

松 本  渉 pp. 399-420 (991KB)

「ケース研究 霧多布湿原トラストの成長軌道」

 北海道のNPO法人「霧多布湿原トラスト」は、2000人を超える会員数を抱える

など広範囲の支持を集めるばかりか、数多くの賞も受けていて、その社会的意義

も認められている上に、NPOとしては収入も多く経営的にも成功していると考え

られる団体である。その秘訣は、法人化する以前の時期を含めた20年近くの間に

様々なプロデュースがあったためであるが、その具体的内容と団体としての遍歴

について述べる。

キーワード:霧多布湿原トラスト、プロデューサー、ナショナル・トラスト

 

コンピュータ産業研究会 pp. 421-474 (1.4MB)

小川 紘一

「光ディスク産業のビジネス・アーキテクチャとその変遷」

 光ディスク産業では、CD系と非CD系(相変化記録やMO)とで競争が行われ、前

者が圧倒的に勝利を収めた。CD系のビジネス・アーキテクチャがマーケティング

主導であり、インストールド・ベースとの互換性を徹させたためである。後者の

CD系は、開発主導のビジネスであった。互換を無視してでも独自の規格を浸透

させようと、国際標準化機構の舞台で覇権争いを繰り広げたがビジネスとしては

成功せず、多くが市場撤退を余儀なくされた。

 MOもインストールド・ベースが全く無い環境で始めた。開発主導型であったの

で市場を日本に絞り込み、まずはニッチ市場でユーザ・インフラ構築を最優先さ

せた。商品開発は、互換性(媒体互換)を徹底させるマーケティング主導を貫い

た。日本市場では広く普及し、高い利益率を誇ったが、ニッチ・ビジネスに留

まっている。

 インストールド・ベースとの互換性を重視すると、開発期間が短縮され、従来

部品を使い回せるので大幅なコストダウンにつながり、市場参入コストが非常に

安くて済み、在庫管理コストも少なくて済む。いいことばかりのように見える

が、ここから本質的な技術革新が起きないという問題も生じる。それ以上に深刻

なのは、既存のインストールド・ベースとの互換性を守れば守るほどパソコン内

蔵市場へのOEMしかビジネスの出口が無くなるという現実である。主要市場がパ

ソコン環境に集中しているためであり、ここに互換・非互換が絡む深い問題が横

たわっている。

 日本企業の一部は、CD-R/RW媒体でブランドを生かすビジネス・アーキテク

チャへと進化させて成功した。しかし互換性維持で成功するかに見えた大部分の

装置メーカーは、モジュラー化が進むパソコンOEM市場で劣勢に立たされ、多く

が撤退を余儀なくされた。DVDでもその兆候が見える。Post DVDであるBlu-rayや

AODでも非互換か互換かの覇権争いが再燃した。日本の光ディスク業界は次々に

次世代技術を生み出すが、これを高収益に結び付ける大きな仕掛け作りではまだ

成功していない。産業再生には技術革新とビジネス・アーキテクチャ構築の両方

の視点をもつ人材育成が求められ、Post DVDがその試金石となる。

キーワード:CD、DVD、Post DVD、MO、互換性、標準化、ビジネス・アーキテク

チャ

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