GBRCニュース   2003.12.01

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『文藝春秋』『中央公論』『フォーサイト』に

      藤本隆宏教授の論文が掲載されています 

 

藤本隆宏教授(GBRC常務理事)の論文が『文藝春秋』『中央公論』『フォーサイ

ト』に掲載されています。

 

「『もの造り日本』国家戦略論」『文藝春秋』11月号

「『強さ』の秘密は『泥臭い進化プロセス』にある」『中央公論』12月号

「『アーキテクチャ発想』で日本企業の強みを測れ」『フォーサイト』12月号

 

どうやら3部作らしいということで、今回は藤本先生ご本人に3本まとめて(裏話

?)解説していただきました。

 

【藤本隆宏】

 今年6月の決算発表以来、「日本の自動車産業はなぜ強くなったの?」といっ

た新聞・雑誌の取材が急に増えました。気難しい学者としては「相変わらずの短

期視野の反応だ!」「収益力と競争力を混同するな!」と苦言を呈したいところ

ですが、総じてマスコミが「ものづくり」に注目しはじめたこと自体は大変結構

なので、できるだけ対応するようにしています。

 そうこうするうちに、9月ごろ、ほぼ同時に『文芸春秋』『中央公論』『新潮

フォーサイト』といった一般・総合雑誌系から原稿依頼が来ました。同じ話を書

くわけにも行かないので、文春は産業論、中公はトヨタ論、フォーサイトは中国

論という風に分けました。「ものづくりセンター」の立ち上げや授業もあって時

間がないので、山隠りして1日1つ、3日で3つの草稿を一気呵成に書き上げ、あと

は担当者と擦り合わせ修正をして出しました。といっても話の中身は相変わらず

で、これまでもう少し専門的なところで言っていた話を啓蒙的(一般読者が蒙者

だと言うつもりはないが)に書いただけで、アカデミックには、とくに目新し概

念はありません。若手研究者諸君は読まんで結構でしょう。

 もっとも、読者迎合的な言い回しと言う点では、少し上手くなったかも知れま

せん。早速、医薬メーカー「林原」の研究者で東大剣道部同期の中村君よりメー

ルがあり、「『能力構築競争』は良く分からなかったが、今度の『中央公論』の

トヨタの話はよくわかった。ようやくお前が何を言いたいのか分かったよ」と

いった趣旨の御感想。10年かかって書いた本は「分からん」で、1日で書いた文

は「分かった」というわけです。よくあることですが、筆者と読者の関係とはこ

んなものでしょう。著者のひとりよがりは、読者には通用せん、ということで

す。

 蛇足ながら、今回の各誌の担当者は、概ね誠実に対応してくれましたが、出版

ギリギリになって著者に無断で、的外れなタイトルやサブタイトルをつける悪癖

は相変わらずで、日本のマスコミ・雑誌業界の一大欠陥です。今回も、文春のサ

ブタイトルや新潮のタイトルでこれが発生しました。

 今回の話がどうのこうのと言うわけではないが、一般に、日本の新聞やマスコ

ミ系雑誌では、「編集権」と称して、著者の意図を直接聞いていないデスク(上

司)が、つり革広告の見栄えの良さとかアイキャッチャー的効果など、中身と関

係ない理由で、勝手に題や副題を変えてしまう、という悪癖がいまだに横行して

います。それじゃ、うちの著作権はどうしてくれるんだ、と私が噛み付いて、ト

ラブルになることも何度かありました。今でもE誌などは事実上絶交状態に近い

です。

 本文の中身で筆者と編集者が真剣勝負でやり合うのは、とても健全だと思いま

すが、筆者に無断で勝手に題を変えることは全く別の話です。著者からすれば論

外です。こういうことをプロフェッショナリズム、あるいはデスクの権威と勘違

いする日本マスコミの後進国的な慣行を無くしてもらわないと、著作者と編集者

の健全な関係は育たないし、日本のマスコミ自体の国際競争力も高まらないで

しょう。

 興奮して、肝腎の中身の話を書くのを忘れちゃいました。どうも済みません。

中身は、『文春』がアーキテクチャと組織能力の産業論、『中公』がトヨタの進

化能力、『フォーサイト』が中国企業によるアーキテクチャの換骨奪胎です。す

でに、あちこちで喋ったり書いたりした話の続きですから、アカデミックには、

そんなに目新しいことはありません。以上。

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