「ものづくり寄席」がいよいよ7月スタート
「ものづくり寄席って何?」という方のために、まずは「ものづくり寄席」のコ
ンセプトをルポ風に書いてみました……
丸の内の一角に「寄席」がある。客席は50席といったところか。もっとも出し
物は落語や漫才といった演芸ではない、大真面目な「経営」の講演なのである。
しかし身構える必要はない。雰囲気はモダンではあるが、限りなく寄席に近い感
じなのだ。一人1,000円の入場料を支払うと、コーヒー1カップで、好きなだけそ
こにいられる。ただし禁煙だが。
そこは毎日夕方、誰かが交代で「ものづくり経営」に関する話をしている。出
演者全員が東大経済学部の特任教授・特任助教授・特任講師・特任助手・特任研
究員といった東大関係者なのだ。とにかく、いつ行っても誰かが話をしている。
多分、大学ではこんな感じで講義をしているわけではないのだろうが、ここでは
観客が、寄席みたいに本当によく笑っている。
形態は、いわゆる講義形式のものもあれば、ビデオ鑑賞会のようなものもあ
る。人数が少なければ、客席の人も交えた即席の討論会に早変わりすることもあ
る。通訳なしで外国人が英語、中国語でしゃべりまくっていることもある。中国
語などはパワーポイントで映し出される画面が漢字で書かれているから、なんと
なく何を言っているのか想像はつくが、一種異空間にいるような錯覚すら覚え
る。
観客はというと、明らかに学生風の若者もいれば、ちょっと休憩に立ち寄ったサ
ラリーマンやOLもいる。丸ビル見物にやってきた中高年の夫婦の姿も良く見かけ
る。中には、かつて○○自動車で働いていた技術者だったという老人までいて、
「私の知っている話とは違う」と出演者に注文をつけることもある。一緒に来て
いた奥さんの見る目が変わった。
隣でさっきから時計を気にしながら話を聞いているサラリーマンは、地方から
仕事で東京に来たと言っていた。ちょっと早めに用事が済んだらしいが、指定を
とった新幹線の時間までは小一時間、時間が空いてしまったので、軽い気持ちで
のぞいてみたらしい。そういえば、昔は、ターミナル駅のそばに映画館や寄席が
あって、地方から来て、帰りの汽車までの空いた時間をつぶす人でにぎわってい
た。中には、それが楽しみで東京に仕事に来て、わざわざ夜行で帰ったなんてい
う人もいた。今は、みんな新幹線になっちゃって、東京駅の周辺も、時間をつぶ
せるのは喫茶店か本屋くらいになってしまった。そのサラリーマン氏は、「今度
はもう少し遅い時間の新幹線にしますよ。また来ます。」と言い残して帰って
いった。
実は、出し物のプログラムは、1ヶ月前にはホーム・ページに発表されている
らしい。私のように、ブラッと立ち寄る人がほとんどなのだろうが、最前列に陣
取って聴いていた学生は、東大生ではないと言っていたが、有名な○○先生の話
が直接聞けると、もう半月も前から楽しみにしていたらしい。そういえば、中に
は東大の正規の授業も含まれているという噂もある。何が出てくるか分からない
知的「福袋」のような空間だ。
実は、これが最初の「企画書」なんです。この企画書を実現するために、「もの
づくり寄席」のプロジェクトがスタートしたわけです。
21世紀COE「ものづくり経営研究センター」(MMRC)主催/GBRC共催の形で、MMRCが
演目・出演者を決めて、GBRCが「ものづくり寄席」の運営に当たります。既に7
月〜9月の演目・出演者は決まっていますので、
http://www.ut-mmrc.jp/topics/yose0407.html
をご覧ください。会場の地図も載っています。もっとも、丸ビルの隣のビルなん
ですが……。
ちなみに、最初の3回だけ紹介すると、
7月5日(月)
藤本隆宏 東京大学大学院経済学研究科教授 (GBRC常務理事)
「ものづくり経営研究センターとは何者であるか」
東京大学ものづくり経営研究センターが本郷三丁目交差点近くの一室で稼動を
始めた。なんでこんなものが出来たのか。何を考えているのか。ざっくばらんに
お話しましょう。
7月8日(木)
新宅純二郎 東京大学大学院経済学研究科助教授 (GBRC理事)
「中国モジュール型産業でいかに戦うか:日本企業に提唱する3つの戦略」
中国の急速な経済発展と中国企業の急成長の中で、日本企業はいかなる戦略を
とるべきか。家電産業のケース分析をもとに、製品アーキテクチャの視点から検
討する。
7月12日(月)
高橋伸夫 東京大学大学院経済学研究科教授 (GBRC理事)
「虚妄の成果主義から育てる経営へ」
「育てる経営」とは何だろうか。寄席では、それを考え方や「思想」の問題と
してとらえ、その違いが顕在化することになる四つの試金石を使って問題提起を
してみたい。
ということで、GBRCの3人の理事がオープニングイベントを担当します。高橋先
生の演目を見てもわかるように、演目は「ものづくり」に限定しないで、広く経
営的なテーマを取り上げますので、製造業だけではなく、いろいろな業種の関係
者もお楽しみに。ちなみに、人気のある演目は再演もありです。出演者は嫌がる
かもしれませんが、人気があれば(お客さんさえ集まれば)何度でも同じ内容でお
話ししてもらいますので、そこが大学の講義とは違うところですね。
『GBRCニューズレター』では、7月以降、「今週のものづくり寄席」のコーナー
を作り、毎週、御案内申し上げる予定です。
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