GBRCニュース   2020.12.21

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Annals of Business Administrative Science (ABAS)
 Volume 19, Issue 6 J-STAGEに本公開されました
 

Annals of Business Administrative Science, Volume 19, Issue 6

が、1215日にJ-STAGEで刊行されましたので、お知らせいたします。

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/abas/

今回、Volume 19, Issue 6に掲載されたのは下記の論文6本です。

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Kosaka, D., & Sato, H. (2020).

Employee engagement and work engagement: Same wine, different bottles?

Annals of Business Administrative Science, 19(6), 227-239.

https://doi.org/10.7880/abas.0200911a

(Available online November 1, 2020)

 

エンゲージメントは、研究においても、また経営の実践においても注目されてい

る概念である。しかし、エンゲージメントには、対象がワークやジョブか、企業

や組織かといった違いで、様々なタイプのものがありうる。本稿では、ワークエ

ンゲージメントと従業員エンゲージメントの概念についての比較検討から、次の

3点を指摘する: (a)マネジメントの分野のアカデミック・ジャーナルではどちら

の用語も同じような頻度で使われるが、アカデミックでないソースでは従業員エ

ンゲージメントばかりが使われ、医学・看護学系の論文ではワークエンゲージメ

ントばかりが使われる。(b)このうちワークエンゲージメントについては、もと

もと病院で働く看護師などを対象としたバーンアウト研究が源流だったためと考

えられる。(c)2つの概念を十分区別していない研究も多くみられるが、測定対象

やその源流の違いから異なる概念として扱うべきである。

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Tsuda, K., & Sato, H. (2020).

Getting things done by middle manager.

Annals of Business Administrative Science, 19(6), 241-251.

https://doi.org/10.7880/abas.0200901a

(Available online November 7, 2020)

 

中間管理職の役割については多くの研究が蓄積されているが、その大半は中間管

理職の管理業務に焦点を当てている。しかし、日本企業の2183人の管理職を調査

したところ、87%の管理職が、メンバーと同等の非管理業務を実行していた。ま

た、非管理業務の割合が少なすぎる、あるいは多すぎるといった極端な中間管理

職のケースでチーム・パフォーマンスが低く、適切な割合の非管理業務を行って

いる中間管理職の方がチーム・パフォーマンスは高かった。

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Wada, T. (2020).

Two dilemmas and one trap with open innovation.

Annals of Business Administrative Science, 19(6), 253-261.

https://doi.org/10.7880/abas.0201013a

(Available online November 11, 2020)

 

Chesbrough (2003)は、R&Dを単独企業によって行うクローズド・イノベーション

CI)に対して、必要に応じて社外の技術知識を活用する、または自社技術を他

社に活用してもらうオープン・イノベーション(OI)の有効性を指摘した。しか

し、OIには、(1) 外部から獲得した知識がライバル企業も入手できる場合、競争

優位とならないアウトソーシング・ジレンマ、(2) 自社と同じ製品を製造・販売

するアセンブラに部品を販売すると自社の製品の強力なライバルとなるインテグ

レーターズ・ジレンマ、(3) 製品の大幅なイノベーションに製品全体の構造の見

直しが必要とされるときに、企業間で分業してオープン・モジュラー・アーキテ

クチャを選択し知識が分散していると対応できないモジュラリティ・トラップが

伴う。これらのジレンマ、トラップが存在するとき、OIは必ずしも効率的な選択

とはならない。

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Fukuzawa, M. (2020).

Reconsideration of value stream mapping and cross-functional integration

in the digitalization of operations.

Annals of Business Administrative Science, 19(6), 263-276.

https://doi.org/10.7880/abas.0201012a

(Available online November 11, 2020)

 

欧米のVSMやクロス・ファンクショナル・インテグレーションに関する既存研究に

おいては、バリューチェーン全体での流れに注目することで全体最適を目指して

いくというリーン生産やフローマネジメントの本質からの乖離が見られたり、モ

ノと情報の流れの実態にもとづいた実証研究が十分に行われてない。近年の日本

のものづくり企業におけるグローバル化しデジタル化の進んだサプライチェーン

やバリューチェーンにおけるモノと情報の流れの全体最適化を進めていくために

は、基本に立ち返り、モノと情報の流れ全体に注目して、「流れの実態」を把握

しつつ、それに作用する要因に関する実証的研究が行われることが必要である。

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Hatta, M. (2020).

Deep web, dark web, dark net: A taxonomy of "hidden" internet.

Annals of Business Administrative Science, 19(6), 277-292.

https://doi.org/10.7880/abas.0200908a

(Available online December 7, 2020)

 

近年オンラインのブラックマーケットや匿名の仮想通貨が学術研究の対象となり

ダークウェブもある程度の知名度を獲得した。しかし似た文脈で、ディープウェ

ブ、ダークネットのような意味の異なる用語も使われるために、ダークウェブを

巡る議論は混乱しがちである。そこで本稿では、これらの概念の違いを歴史的経

緯も含めてわかりやすく整理した上で、ダークウェブで用いられるオニオンルー

ティングと呼ばれる技術を説明する。

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Byun, S. (2020).

Managing the interdependence among successive stages of production in

steel industry.

Annals of Business Administrative Science, 19(6), 293-305.

https://doi.org/10.7880/abas.0201111a

(Available online December 11, 2020)

 

世界の鉄鋼メーカー約200社の中で、溶融亜鉛メッキ鋼板、電磁鋼板など、いわ

ゆる高級鋼を生産できる鉄鋼メーカーは一部に限られる。鉄鋼産業のような装置

産業の場合、設備に技術知識が体化されているので、技術移転およびキャッチア

ップは比較的容易とされてきたが、いまだに高級鋼生産の分野では、大規模な資

本投資と最新鋭設備を武器にした新興国鉄鋼メーカーの苦戦が続いている。その

原因は、既存工程に新たに工程を追加接続すると、追加工程だけではなく、全工

程の操業パラメータを調整する操業技術が必要になり、工程数が増えると調整す

べき操業パラメータの組合せが膨大になり、パターン知識獲得に時間がかかるか

らである。

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ABASは、J-STAGEの「早期公開」(Advance Publication)機能を使っております。

各コンテンツには、早期公開の段階で、すでにDOIが付与されていて、CrossRef

でダウンロードできます。たとえばDOI10.7880/abas.0150805a の論文は、

https://doi.org/10.7880/abas.0150805a

と入力すると、論文がダウンロードできます。

 

上記の論文は、いずれも既に早期公開版を公開しておりますが、早期公開した論

文はこうして2ヶ月に1号のペースでまとめて、巻・号・ページ等を確定してか

J-STAGEで本公開されます。早期公開版は、今回の本公開版と同じDOIが付与

され、同一の論文として扱われ、Google Scholarにもデータが提供されます。

さらに、本公開版は、学術論文を中心とした学術情報を検索して利用できる世界

的なオンライン・データベースEBSCO host (有料)ProQuest (有料)にも逐次

収録されて、全文ダウンロードが可能となります。

 

ABASは、「引用されるジャーナル」を目指して鋭意努めてまいりますので、今後

とも是非ご投稿先としてABASをお考えいただければ幸甚です。

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