設立趣旨 | |
オンライン・ソフトウェアとは、広くはインターネットを通じて、すなわちオンライン上 で配布されるソフトウェア全般を指す。より具体的には「フリーウェア」「シェアウェア」と呼ばれるソフトウェアがあげられる。 |
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今日、ハードウェアとインターネットの急速な発展・普及を背景にして、多数のオンライン・ソフトウェアが 開発され、多くのコンピュータ・ユーザによって利用されている。しかしながら、経営学をはじめとする学問的な研究では、ソフトウェアを研究対象と することはあっても、こうしたオンライン・ソフトウェアが取り上げられることはほとんどなかった。 | |
既存の学問的研究で取り上げられてきたのは、いわゆる大企業が「商用」と銘打って営利目的で開発、販売 しているソフトウェアが中心であった。オンライン・ソフトウェアを研究対象に選んだ研究を強いてあげるとすれば、驚異的な成功を収めたLinuxに関する 研究である。しかしLinuxは、その奇跡的とも言える大成功故に例外的に研究対象とされたにすぎない。 | |
既存研究におけるこのような指向性は、大多数のオンライン・ソフトウェアが利用者数、開発組織の規模において 相対的に小さいことを考慮すれば、まんざら理解できないものでもない。つまり、既存研究においては、商用ソフトウェアやLinuxなどのように、利用者数、 開発組織の規模が相対的に大きく、注目を集めやすいソフトウェアが研究対象とされてきた。そのため、フリーウェアやシェアウェアといった多くのオンライン・ ソフトウェアは看過されてきたのであろう。 | |
しかし、個々のソフトウェアの利用者数や開発組織の規模のみが、ソフトウェア研究の対象足るべき用件ではない。 確かに1つのソフトウェアで多くのユーザを獲得した事例を取り上げ、成功事例として分析することには大きな意義があるだろう。しかし同時に、現時点ではユーザ数が 少ないものの、将来的には多くのユーザを獲得する可能性があるオンライン・ソフトウェア、あるいは、総体として多くのコンピュータ・ユーザに大きな便益をもたらしている オンライン・ソフトウェア群の存在を、学問的な見地から調査・分析することは、ソフトウェア開発に関する知見を豊かにするというアカデミック・コントリビューションのみならず、 今後のコンピュータ社会・インターネット社会のあり方を考える上でも有益な知見をもたらすと考えられる。 | |
このような認識のもとに、この研究会ではオンライン・ソフトウェア全般、とくにフリーウェア、シェアウェアと呼ばれる ソフトウェアを対象として調査・分析を行っていく。具体的な研究活動としては、オンライン・ソフトウェアの開発に関する調査を中心に、オンライン・ソフトウェアを 利用するユーザを対象とした調査、オンライン・ソフトウェアを利活用する企業の営利活動についての調査などがある。つまり、オンライン・ソフトウェアをとりまく 現代の状況を包括的に把握することが、この研究会の目的である。 |
活動趣意書―2004年6月13日― | |
設立趣旨で述べたように、本研究会は、フリーウェア、シェアウェアと呼ばれるソフトウェアの開発活動の実態が 一体どうなっているのかという問題意識から研究を開始した。そこで我々は、著名なオンライン・ソフトウェアの開発者にインタビュー調査を実施し、 フリーウェア、シェアウェアの開発の実態に迫るべく、調査・研究を行ってきた。同時に、一般的なパッケージ・ソフトと比べてオンライン・ソフトウェアの 開発のあり方を特徴づける要因は一体何かを明らかにすべく、約1年半にわたって試行錯誤を繰り返してきた。 |
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こうした調査と試行錯誤の中で、我々が着目したのが開発活動を担う「組織」である。 | |
通常「開発組織」と言えば、企業内の部門、あるいは企業内で連携する複数の部門が真っ先に想像される。 だが、『経営の再生―戦略の時代・組織の時代―』(高橋, 1995; 2003, 有斐閣)が組織論研究の成果として明らかにしたように、 そもそも「組織」とは「企業」とは別の概念で、その広がりは企業という境界にはとらわれないはずである。 | |
加えて、われわれが観察したオンライン・ソフトウェアの事例では、開発組織の様相が、提供しようとする 財・サービスの「客観的な」属性に規定されているとは言い難いことが示唆されていた。むしろわれわれが観察した事例では、使用者であるユーザと 提供者である開発者および企業がともに能動的役割を果たし、これらの主体がソフトウェアに付与する属性、共有するソフトウェアに関する認識が、 開発組織の存在理由そのもの、開発組織の活動実態を規定するのではないかとすら考えられるようになった。 | |
このような「組織」に関するより広く柔軟な概念を採用することによって、われわれの問題意識は 拡張せざるをえなくなった。 | |
組織が企業という境界を超え、しかもインターネットに代表される情報通信技術の発達と普及がそれを 加速させた場合、開発、提供・配布活動とそれを担う組織はどのように変化するのか。これがわれわれの眼前により広い、新たな研究課題として 浮かび上がってきたのである。 | |
そこで、本研究会の活動はその研究対象を広げることとなった。企業の境界を越えた組織の広がり、組織の存在理由や 活動実態に対するユーザ、開発者、企業の能動的役割を鍵概念として、その研究対象をソフトウェア以外にも広げうる可能性を得たのである。 | |
今後の研究会の活動は、従来からの研究対象であるオンライン・ソフトウェア―フリーウェア、シェアウェア―に関する 研究が一つの柱であるが、それと並行して、インターネットを活用したソフトウェア以外の財・サービスの開発、提供・配布活動に関する研究もその視野に 含めることになる。 |
研究会メンバー | ||
東洋大学経営学部 専任講師 |
藤田 英樹 (研究会代表) |
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一橋大学イノベーション研究センター 専任講師 | 生稲 史彦 | |
成蹊大学経済学部 助教授 | 野島 美保 | |
成蹊大学経済学部 専任講師 | 山本 晶 | |
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研究会の活動 | |
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