1998年6月2日

テレビゲーム産業研究プロジェクト

テレビゲーム産業は、情報技術分野で国際的な競争力が弱まりつつある日本企業にあって、際立った競争力を保持している業界である。とりわけ、ソフトウエアやコンテンツ産業では、日本企業が競争優位を保っている希有な例が、テレビゲーム・ソフトであろう。本研究プロジェクトの目的は、日本のテレビゲーム産業が競争優位を維持している理由を明らかにすることである。このような研究を通じて、ソフトウエア産業や情報技術産業における日本企業の今後のあり方について、示唆が得られるであろうと期待される。

具体的には、1)ゲームソフト業界の分析、2)業界全体のビジネスモデル、という2つのレベルで以下のような分析を進める。この産業の競争力を考察する上で、それぞれが重要な役割を果たしていると考えられるからである。


(1)ゲームソフト業界の分析

日本の家庭用テレビゲーム産業が、その成立以来の10数年間において順調な発展を遂げ、日本国内はもとより世界の市場において主導的な地位を確立した事実の一つの要因として、消費者にとって魅力ある、多様なソフトウェア(ゲームソフト)が一貫して提供されてきたということが挙げられる。しかし、ゲームソフト業界に関する実証研究は極めて少ない。本研究では、優れたゲームソフトがどのようにして生み出されてきたのかという問題意識で調査、分析をおこなう。

上記の基本的問題意識に答えるため、業界全般と各企業の製品開発活動という2つのレベルから調査、分析を行う。

(a) 産業構造・経営システム:ゲームソフト分野の産業構造のあり方がどのようなものであり、それがゲームソフトの開発にどのような影響を及ぼしているのか、という点を明らかにしていく。具体的には、参入・退出の状況、集中度、企業規模の分布、雇用システムなどを全般的に把握する。

(b) 製品開発マネジメント:製品開発活動を個別の企業及びプロジェクトのレベルで把握し、どのような企業の取り組み、経営資源がゲームソフトの製品開発を成功に導くのかを明らかにする。

このような研究を踏まえ、ゲームソフトの製品開発とそれを取り巻く状況を、既存の研究と関連付けることも試みたい。すなわち、他産業の製品開発研究の成果や日本的経営に関する知見の中に本研究の成果を位置づけ、既存研究とどのような点で整合的であるのか、既存研究で見られなかった要素はどのようなものであるのか、といった形で考察を進めようと考えている。


(2)テレビゲーム産業におけるビジネスモデルの形成と進化

本研究は家庭用ビデオゲーム産業における新規企業の参入やリーディング企業の交代などの近年国内で起こったダイナミックな動向に着目し、現存するビジネスモデルのうち代表的なプラットフォーム製造企業2社のビジネスモデルについて調査、分析を行うものである。具体的な問題意識として両ビジネスモデルを規定するハード会社(中核企業)とソフト会社(開発企業)並びに卸問屋・小売(流通業者)の間の相互の契約内容、企業間関係について契約の束として考えた場合にそれぞれのモデルにおける補完的な関係の存在を示し、両ビジネスモデルの特徴についてインセンティブとなる利益配分の構造とリスク負担との関係を中心に機能論的な説明を行いたい。また、このようなインセンティブとリスク負担の構造の変化が各企業の行動にどのような変化を与え、産業組織にどのような変化が起こったかということについても考察を加えたい。

さらにこうしたビジネスモデルの形成には背景としてその発生時に出身業界における取引慣行などに代表される産業組織の影響が強く、その産業組織の枠組みがそれぞれのビジネスモデルに導入され、元来その産業が持つ特徴や周囲の環境変化に併せて進化を遂げ、現在の形態に定着していったという歴史的なビジネスモデル形成のプロセスについて発生論的に説明を加えることを目的としたい。

以上

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