第6回 2006年 3月7日 火曜日 開催
株式会社フロントメディア顧問
増田弘道氏
「携帯放送の可能性」
<プレゼンテーション>
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フロントメディア提供の新規携帯サイト「まるごとアニメ」(日本動画協会公式サイト)のご紹介
- 通信と放送の融合をめざすベンチャービジネス
- 文化放送とのLLP設立、ハイブリッド放送の実施(「まるごとステーション」)
- 携帯配信における音楽番組の著作権処理に対しいち早く取り組み、昨年末よりラジオ番組を配信
- 独自技術を開発し、長時間の動画配信が可能に⇒「まるごとアニメ」のサービススタートへ
- テレビ番組から映画までまるごと配信が可能になった
- IT業界では新技術を開発した企業に大きなアドバンテージがあるので、常に先行するビジネスを展開していきたい
- 有料配信では、課金システムなどを考えて併せても、携帯のほうがPCよりもビジネスになる可能性が高いと思われる。
- 3月20日にドコモからサービス開始
- 通信と放送の融合をめざすベンチャービジネス
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著作権の処理
- レコードレンタルやインターネット・携帯配信といった、技術の革新やビジネスモデルの進化によって出現する状況に法律が対応しきれていない
- 法制化を待っているとビジネスチャンスを失うので、今後他の事業者にも呼びかけて権利者を代表する各団体と適正なルール作りを行っていきたい
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「まるごとアニメ」の内容
- アニメ番組に特化した番組表とそれに付加するサービス
- 視聴予約(ワンセグ対応)
- フルアニメの配信アニメのデータベース(タイトルだけでなく、作者、監督なども網羅)
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「ケータイ放送局」を目指す
- 「放送と通信の融合」の実現間近
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ケータイ放送局のスタート予定日本のアニメの状況(強さ)と問題点
- 数量ベースでは、世界の65%は日本のアニメ(ほとんどテレビアニメ)といわれている。残りはほとんどアメリカのアニメ。
- ただし、アメリカは映画が強く売上が大きいと予測されるので、金額ベースではアメリカに抜かれている可能性もある(このような産業データも作っていく必要を認識)
- 日本のアニメが躍進した理由は「経済性、生産性、エンタティンメント性」で、それが競争力となって世界に流通し始める
- アメリカのアニメなどに比べ経済性があったため世界中に進出できた。
- 生産性が高い。これほどアニメをつくっている国はない。
- アニメのエンタティンメント性はマンガから来ている。アメリカの映画文化に匹敵するような日本の漫画文化が、アニメを支えてきた
- 日本のアニメに影響を受けたアメリカの映画監督も多数
- 1970年代から日本のアニメが世界で人気を得るようになり、放送規制がかかるほどの国もあった。アメリカではAKIRAが紹介された頃から注目され、ポケモンで一気にブレイクした。オトナ向けのアニメも増えた
- 現在はアニメが注目され、外から資金が流れてくるようになったため、作品数が増えてきている。特にここ数年凄い勢いで作品数が増えてきているので多少過熱気味の懸念
- 日本の2Dアニメ(セルアニメ、手描きアニメ)は事実上世界のデファクトスタンダード
- 世界的なアニメの動向を見ると2Dは日本、3Dはアメリカという図式が生まれつつある
- アメリカでは1995年以降、トイストーリー、シュレックなど3Dアニメの大ヒット作品が続出。アニメ映画は完全に3Dに移行。
- 韓国もかなり3D にシフトしている
- それに対し、日本は3D対する取組が遅れている。
- このまま行くと2Dは「伝統工芸化」(ジブリの鈴木プロデューサー)する可能性がある。日本のアニメとしては3Dにどう対応するかが今後の課題
- 今までのように、「気づいたら世界で売れていた」、という状況から、海外のことも考慮した戦略を立てる時期に
- 日本のソフトパワーの一翼を担うという意識がアニメ産業に必要
<質疑応答>
- 産業として、映画産業の中のアニメの位置は?
- 興業的には、毎年変動はあるが映画産業の1/4から3/1程度がアニメではないか(ジブリ作品があると数字は大きく変わるが)。毎年映画興業の上位ベスト10に3、4本入っている。映画の中で確固たる地位を築いていると言える。
- アメリカの映画産業のように、アニメにもプロデューサーが資金を集めて、ディレクターが制作と言うような流れになっているのか?
- 日本の場合、現在は製作委員会方式が多いのでそこが資金源となる場合が多い。
- 海外に目を向けた戦略が必要ということだが、海外に目を向けると日本が手薄になるということは?
- 海外を意識して作ると日本と違って規制が多いので、クリエイティブのバランスの取り方は難しい。(特にアメリカの放送規制を意識すると日本的なティストが損なわれる場合が多い)しかし、少子化の中で海外市場は欠かせない。今後特に注力しないといけないのは、ビジネスパワーである。制作のビジネスモデルは世界に誇れるが、ビジネスのビジネスモデルはまだまだで、残念ながらハリウッドに敵わない。日本が作ってアメリカが儲けるような図式は避けなければならない。
- 中身のことよりも外側の枠組み(ビジネスの枠組み)で海外のことを考えることが重要だということ?
- 中身ももちろんだが、ビジネスのパワーをもっとつけていかなければならない。そのためには優秀なプロデューサーを育成する必要がある。