コンテンツビジネス研究会は、テレビゲームなど娯楽性の高いビジネス産業に関する情報交換の場です。

第15回 2007年 2月5日 曜日 開催
経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器課 平井氏

「情報家電の進化とコンテンツビジネスの可能性」

<プレゼンテーション>

  • テーマ:「情報家電の進化とコンテンツビジネスの可能性」(ハンドアウトあり)
    ご講演要旨

      • 情報家電とは?
      1. PCと情報家電の違い
        1. 産業に占める日本のポジションの違い
          1. PC、およびMPU、DRAM、OSなどでは日本は弱い
          2. 情報家電では、携帯電話を除けば、日本の企業が世界的に強いといえる
        2. 産業構造の違い
          1. 水平的なモジュール構造を持つPC
          2. 垂直統合型の情報家電
            1. ブランドメーカは各国で分かれている
            2. しかし、上流をたどれば(たとえば、ディスプレイ分野では液晶パネル、部品、製造装置)、日本の存在感がかなり大きくなる
            3. 特に日本は産業内で垂直統合ができている
            4. この縦のつながりをどのように競争力につなげていくか?が大きな課題
      • 情報家電における“プラットフォーム”という視点
      1. 情報家電における日本の強みとは何か?(例:液晶テレビで付加価値のある部分)
        1. 液晶パネル
        2. 半導体IC(コアデバイス、映像エンジン)
      2. どのようにして強みを守るか?3つの選択肢
        1. どんなにコストがかかってもブラックボックス化して付加価値のある部分を守る(自社製造、自社開発モデル)
        2. モジュールになっているデバイスを買ってくる(調達モデル)
        3. 自社が開発して、それを外販もして自社がプラットフォームを握る(プラットフォームモデル)
      • 情報家電「が」プラットフォームという視点
      1. サービス、メディア、コンテンツが情報家電の上に乗ることで消費者に届く
      2. 日本の知的財産としてのコンテンツにおける強み
        1. 漫画、ゲーム、アニメなどに強い競争力
        2. 他の産業と協同して、新たなリーディング産業になる期待
      3. テレビ放映ビジネスの仕組み(従来と将来像)
        1. 権利関係におけるTV局の大きな交渉力
          1. TV局が放映する権利(放映権)を買い取る
          2. 原作者は、権利者として1次創作者の権利を持つ
          3. 監督、実演家、美術担当者は、労務契約、製作参加であって権利者ではない
          4. 音楽はJASRACと包括契約(収入の2%弱)、その番組を他で放送するときに問題になる
        2. 広告収入モデル
          1. スポンサーは1枠(30秒CM1回1回、ゴールデンタイムで月3000万円ほど)ごとに広告代理店から買う(数字のイメージとしては、2割⇒広告代理店、1割⇒TV局の利益、7割⇒ネットワーク局の維持費、プロダクションへの制作費支払い
      4. テレビ番組を中心としたコンテンツビジネスの広がり
        1. コンテンツのワンソースマルチユース(アニメーション)
          1. ネット、携帯、映画、ビデオ、DVD
          2. キャラクター
        2. 商品化ビジネスの仕組み
          1. 元になった番組を制作した制作会社に、商品売り上げに対して3%程度、それを一部以下に配分
            1. 放送に関する権利者(1/3程度)・・・TV放送を通じたキャラクター認知への対価(まずテレビ番組から始まったから)という根拠
              1. テレビ局
              2. 広告代理店
            2. 原作に関する権利者(1/3程度)
              1. 原作者
              2. 出版社(原作者の代理人)
        3. ビデオ化・DVD化の権利処理
          1. メーカーが原作者、TV局へ直接配分する
          2. 番組制作会社(10%台)からは外へ配分しない
          3. 商品化と一部異なり、音楽CDの権利処理に近い形
      • 情報家電へのネット配信(ブロードバンドを通じて直接テレビにコンテンツが流れる)
      1. 共通のプラットフォームの確立にむけてメーカーが共同して取り組むべき
      2. シャープ、ソニー、東芝、日立、松下が共同研究、テレビポータルサービス株式会社設立
      3. 2007年、2月ポータルサービス、「アクトビラ」のサービス開始
      • 情報家電の進展によって既存のテレビのスポンサーシップビジネスモデルは変化するか?
        • 視聴率とスポンサー収入との関係がプライムタイムに偏った設定になっている
        1. プレミアムの設定、費用対効果(視聴率だけを稼ぐという意味)では損
        2. テレビ番組の録画機械(レコーディングサーバー)の販売
        • ハードディスク録画機の普及による録画視聴の増加、またそれが引き起こす問題
        1. CMスキップ(HDRの場合約5割がCMを飛ばしている)・・・スポンサー料の費用対効果の低下、ビジネスモデルを脅かす可能性
          1. プロダクトリプレイスメントの可能性
          2. CMスキップを禁止する制度、有料視聴モデル・・・すぐに実現するのは厳しい
        2. スポンサー料のプライムタイムのプレミアムの根拠を揺るがす可能性
        • 現在記録されていない録画視聴やネットTVを含めた視聴率を構成に測定するために必要な環境整備ができるか?
      1.  

 

    <質疑応答>
      • Q視聴率に関する議論、ハードディスク録画機によって実際、全体的な視聴率が下がっているか?また視聴率の対象世帯のサンプル抽出は偏ってないか?
      1. A
        1. 視聴率は実際に長期的に低落傾向にある。理由は、ビデオリサーチによればエンターテインメントの多様化を挙げている。少なくとも見かけ上の視聴率以上には見られていると言えるだろう。(録画、DVDなどでの視聴分が上乗せ)
        2. 学生や高齢者との間で視聴行動が異なるが、現在の視聴率調査のサンプルは、年齢層と男女別で、日本の人口構造に比例した形でとっている。(例としては、少子高齢化によって、高齢層のサンプルを増やす)ただし、首都圏で300世帯程度のサンプルなので、細分化しても誤差が増えるのみ
      • Qコンテンツのヘビーユーザーがどのような行動をとっているか?消費者の時間が限られている場合、たくさんあるコンテンツをどのように整理するか?
      1. Aどれぐらい録画してどれぐらい見ているか、どうやって、効率的に欲しい情報にアクセスしているか、という調査を今春から経済産業省も始める予定
      • Q視聴率はどれくらい信憑性があるのか?裏操作などが存在するのか?(中国ではそれが話題になった)
      1. A日本では視聴率の測定がごまかされているということはあんまり考えにくい。逆に言えば、そもそもその数字にどのくらい意味があるのかどうか?小数点以下の数字にはあまり意味がないと考えられる
      • Q各個人が録画してためることが、機会損失ではないのか?どこか一箇所でそのアーカイブを共有できる課金などを適切にした上でのストレージのようなものを視聴者側からのイニシアティブで実現すれば効率的ではないか?
      1. A それ自体は、TV局が主張する編成権の否定になる。TV局のビジネスモデルの性質上ありえない。現状では、個人で録画するしかないだろう
      • Q テレビの編成と生活のリズムが合わずTV離れが進む可能性への対応はどのようになっているか?情報家電プラットフォームのユーザーが「簡単安心安全」に利用できるためにどのような取り組みを経済産業省として予定されているのか?
      1. A 
        1. TV離れは確かに進んでいると思う。それに対して、できるだけ多くの人に見てもらうためにTV局とプロダクションは、子供から大人まで取り込む(大人が楽しむ子供番組など)ことや、海外へのコンテンツの販売を考えている
        2. 簡単安全安心のうち、簡単な操作性に関してはPCのキーボードをTVのリモコンのような簡単さで使えないか、ということを特に強く考えている。国としては、たくさんあるコンテンツへのアクセスビリティを高めるためにどのような対策をとるべきかについて、産業や研究者からの提案公募を行い、審査し対応する
      • Q ビデオオンデマンドや、GYAO(オンライン放送)などについてどのように考えるか?
      1. A有望なコンテンツの流通手段ではあるが、現状では、コンテンツの質が低かったり、流せる線が細かったりするため、TV放送を補完するものであり、TV放送を脅かす程度の大きなメディアにはなっていないとおもう
      • Q テレビ局や広告代理店が大きな力を持つのは、古い習慣ではないのか?そのために、消費者にとっては不都合なことも生じているのではないか?また、今後テレビ局や広告代理店の中抜きが可能になるようなビジネスモデルはありうるか?
      1. A 大きな力をもつ妥当性は、ビジネスの成り立ち、経緯などにも依存するとおもうので、一概に妥当でないとは言えない。またビジネスモデルはスポンサーシップモデルからの構造変化が生じるということは確かだといえるだろう。スポンサーの広告費にも限界があるため広告マーケットのパイの大きさが増えるとは限らないので、新しいメディアに広告が流れれば、同じ大きさのマーケットでの競争が始まるため、そこでテレビ局がどのような役割をとるようになるかで変わってくるだろう
      • Q 現実的にTV番組制作会社において、仕事量が増えるが単価が低くなってきているため、利益を出しにくく、磨耗してきているということがよくいわれている。その中で、なにか政府として策はありえないか?たとえば、再放送を増やすための権利処理の整備などである程度は救えるのではないか?
      1. A 確かに磨耗していることは認識しているが、自由競争経済の中では、競争をやめるような、割り当てなどの策をとることはできないために、倒れるまでやるということになるだろう。現実には倒れる前にM&Aなどで救済されるということになるだろう。また個人的な意見としては、再放送を増やすことで既存の制作会社を守るのではなく、既存企業が倒れたとしても、新しい製作会社が制作する機会を増やしていくほうがよいのではないか?ただし、どちらが正しいと断言できる問題ではないと思う
      • Q 著作権法上で平井さん個人として改善したほうがよいと思う部分はどこか?
        • A既得権益が存在している場合には、改善すべき点でも改善しにくいというのが現実だろう。個人的に面白いと思われる部分として挙げられるのは、テレビ番組を映画の著作物として見た場合の著作権法28条、29条はあらゆる二次利用に対して原作者だけが優遇されていて、バランスを欠いていると考えられるところではないか?