第15回 2007年 8月24日金曜日 開催
「テレビキャラクターの玩具化プロセスの諸類型」
<プレゼンテーション>
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- はじめに
- 国内玩具市場規模は7000億弱
- 男の子がテレビゲーム(特に任天堂のWiiとDSが2006年に発表になったので)のほうに向いているので、玩具売り上げが減ってきている
- メーカー別には上位2社で約半分
- 季節特性があり、特に12月の売り上げは月平均の2倍
- なぜ「キャラクターなのか」
- 国内玩具市場に占めるキャラクター商品の割合は23.7%程度と試算できる
- テレビキャラクター玩具化の良いところ、悪いところ
- 良いところ:TV放送による宣伝効果、人気が出る
- 悪いところ:人気が出るか?どれだけ続くか?誰が見ているのか?
- キャラクター玩具のありかた
- 商品化の流れ
- 分類としては、「ラベル商品」と「再現商品」
- ラベル商品とは、キャラクター抜きでも商品として成立しているもの。比較的短期間で制作できる
- 再現商品とは、キャラクターの外見やイメージを再現したもの。制作に時間がかかるが、売れるのでやらないわけにはいかない
- テレビキャラクターの玩具化プロセスの類型
すでに存在するものを活用する場合
- キャラクター先行型
- 映像作品が先にあり、テレビで人気が出て、それを玩具化
- 人気が出ているので、商品化権がメーカー間で争奪戦になり、コストが高くなったりする
- 人気が出てからの商品化になるので、商品が市場に出るころにはテレビアニメの人気が低迷している可能性もある(リードタイムは2、3ヶ月)・・・だんご三兄弟の例など
- 玩具先行型
- おもちゃからテレビアニメになるもの
- もとのおもちゃのイメージからアニメ自体が外れられない
- ベイブレードやトランスフォーマーなど
新たに立ち上げる場合
- 一方通行型
- アニメ化前の段階で、商品化権をメーカーは取得するだけ
- どういう玩具を作れるかわからない時点から商品化にコミットしなければいけない(商品化しづらいアニメになる可能性。聖闘士聖矢など)
- 相互連携型
- 映像作品の制作に玩具メーカーも積極的に参加
- 玩具メーカーのグループ会社のデザイン会社がアニメのキャラクターデザインにかかわることで、玩具化しやすいキャラクター作りを心がける、などの取り組み
- 事例の紹介
- 新規立ち上げの難しさ、玩具とキャラクターの乖離(相互連携型)
- グループ会社が制作をした
- 原作を実写のドラマとした映像作品があったのでそれをアニメ化、新しいキャラクターとして立ち上げた
- 主力商品(バトン)はそこそこ売れたが後はあまり・・・途中でキャラクターのアイテムをバトンから変えるがそれがうまくいかなかった
- バトン自体はキャラクターから離れて売れた
- 新しい技術(テレビにつないで遊べる)を使った新しい主要アイテムを作ろうということがアイデアとして存在
- 結果としてこのテレビにつないで遊ぶ、ということがキャラクターのイメージとはあわなかった、と考えられる
- 原作付きであるが故の課題
- 月刊誌で連載されていた原作のテレビアニメーション化にあわせた玩具化
- 原作のイメージを損なわないための玩具化を心がける必要があった
- もともと原作は玩具化を見込んで作りこんでいたよう
- 子供がすきそうなモチーフを織り込んで玩具化するが、それがうまくいかなかった。主人公がハートの鈴を持っているという設定で、ハートの鈴自体では、子供が持ってどう遊んでいいか、わかりにくかった(鍵をあける、など子供がやりたがる遊びを織り込めていなかった)
- 原作とアニメのターゲットがずれてしまっていたのではないか
- 一年持たずに終了になってしまった
- 玩具から生み出されたキャラクター
- 玩具(カラオケ玩具)から、月刊誌連載をし、キャラクター化、そしてテレビアニメーション化
- やや年齢層が上の女の子向けで月刊誌とマッチ
- 定価6000円程度と高めのおもちゃにもかかわらず売れた
- 一年の放送期間をさらに9ヶ月延長
- ただし全般的に商品全部が売れたというわけではなく、カラオケマイク以外の周辺のイメージ玩具には波及せず
- 事例から得られる知見
- 確実に成功できる類型というものはない
- 諸類型は時系列的に変化していくものではない
- 後から発生した類型は存在するが、淘汰はない
- 類型によって重要課題は違ってくる
- 議論の発展のために
- 類型化の妥当性
- 厳密にやろうとするとキャラクターの数と同じくらい類型ができる
- もっと大雑把にわけるべきか?
- そもそも類型が存在するのか?
- 成功・失敗の基準
- 売上、利益以外の条件があるか?
- 非テレビキャラクターへの議論の拡張
- 漫画原作、TVゲームのキャラクターの場合のテレビアニメ化を受けた玩具化などパターンはいろいろある
- 玩具事業への議論の拡張
- キャラクター玩具は、玩具全般の商品化と違うのか、同じなのか?
- 玩具事業の系統立てた整理をする上で出てくるトピックがあるのではないか?
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<質疑応答>
- デザインの人材はどのように確保しているのか?
- 人材は自社内で育成することが多い。同業他社からの中途採用もある。デザインを専門的に勉強していない人でも、業務の中でデザインを身につけていく形をとっている
- 商品化に社長以下、役員はどのようにかかわっているのか?
- 役員の商品化に対する参加度合いは、基本的には商品による。執行役員、本部長クラスは積極的に関与している場合が多いといえる
- 大きなキャラクターが30年来生まれていないのはなぜか?(今でもウルトラマンなどが主要キャラクターである理由は何か?)
- 新しいものを作っていないというわけではない。長く続けているゆえに、ブランドイメージが出来上がってしまっていることがあるだろう。新しいものをいろいろ作っても長続きするものが少ない。その理由には、キャラクターを放送するテレビ番組の枠の争奪戦が激しいために長続きしにくい。バンダイが一番強い枠をウルトラマンなどの強いキャラクターで押さえてしまっているためこの牙城を崩しにくい。昔親が見ていたものが現在やっている(2世代キャラクター)と安心して子供に見せられるという要素もあるだろう。
- 新しいキャラクターを立ち上げる時の一番の難しさとはなにか?
- どの場合にも共通しているが、玩具とキャラクターのマッチングの難しさがある。また、この場合は特に、新しく作るためどういった絵姿がターゲットに受け入れられるのか、さらにそれをメーカーとアニメ制作側が相互にすり合わせることが難しい
- 2世代キャラクターなど、ファンの世代(期間)管理をするのにあたってなにかしらのパターン、戦略などはあるか?(実写とアニメなどリメイクのサイクルなどに鉄則はあるのか?)
- 明確に世代を気にするようになったのは21世紀に入ってからといえる(昭和50年代生まれが30代になった、というあたり)
- それをどう管理しているか、というと、率直に言えば、そんなに深くは考えていないのではないか?きちっと戦略的にやっているとはいえない、のではないかと思う
- たとえば、ウルトラマンの40周年記念作品など○周年などをきっかけに使うということはあるだろう。あとは、最初に経験した人が作り手に回った時期ということもあるだろう
- ロングセラーキャラクターの多いバンダイでも、世代を意識して管理したというよりは、「継続は力なり」と言うか、続けていることの蓄積、そしてブランドイメージ形成の結果、世代がついてきたと考えられるのではないか?
- テレビに依存するキャラクターと依存しないキャラクターとのアプローチの違いはあるか?
- テレビに依存しない場合、それ以外の方法でマスに訴えかけなければいけないので、TVCFを打つ必要がある。または、アーケードでのカードゲーム筐体と連動させることがあるだろう。その場合はカードゲーム筐体をできるだけ多くのお店に配置し、筐体内にCMを入れるなどの工夫が必要。あとは雑誌での漫画連載などで露出を保つなどの工夫が必要
- ネット発のキャラクターという経路はないのか?
- 現在のところでは、少し難しい。理由としては、サイクルが早いことと、氏素性がはっきりしない(権利関係が整理しにくい)ものが多いため、実際のキャラクター化が難しい。
- 販路としてのネットはどうか?
- 現状では話題のある商品に限定されている。たとえば、トミカやプラレールなど、単価の低いものだと送料との兼ね合いで、消費者も買いにくいのではないか?このように、単価が安く、種類が多い場合には、特に物流コストの高さが問題になってくる。現状でもクリスマスなどで、店頭に無いものをネットで探して購入する、という経路はあるだろう。さらに、将来的にはこの経路は確実に存在してくるとおもうので、各社手をうっている段階ではあると思う
- 玩具の採算ラインはどのあたりなのか?コスト構造はどのようになっているのか?
- 金型を作成するコストが大きい
- 採算ラインは、製品によってまちまち(部品の多さなど)
- 部品の共通化などのコスト削減は進んできているが、生産技術の革新のようなものはもう難しいのではないか
- 現状、中国で製造するためにリードタイムが長くなっている。その意味では、そもそも中国で生産するのがいいのかどうか、という議論があるだろう
- 玩具のターゲット顧客層として、オトナ市場をどうみているか?
- 確かに、大人向けの玩具が高価格ながらもヒットしている(例:グランドピアニスト)。その意味では幅広い層に訴求する新しい玩具というのが生まれてきているといえる
- ただ、これまでどおり、子供向けというのも絶対に主要顧客としてはずせない