コンテンツビジネス研究会は、テレビゲームなど娯楽性の高いビジネス産業に関する情報交換の場です。

第16回 2007年 12月11日 開催

「コンテンツの生産性を高める産業構造―主要コンテンツ産業の競争状況と生産性の分析―」

慶應義塾大学経済学部・経済学研究科 准教授
田中辰雄氏

テレビ局や映画配給などのメディアがあまり競争を行わず、カルテル的になって
いるため、よいコンテンツに高い報酬が払われず、制作会社の創造性を低下させて
いるという指摘がある。これに対して、メディアのような産業に市場競争はあては
まらず、市場競争はむしろ文化的創造性の芽を摘むという反論が出される。巷間、
この二つの議論は平行性をたどることが多い。
では、実証的にどちらの主張が正しいかを調べる方法はないのだろうか。講演者
は、公正取引委員会競争政策研究センターで数人でプロジェクトを組み、テレビと
映画を対象に調査を行ったので、その結果を報告する。結論は、テレビ・映画配給
などメディア間の競争は、制作会社の効率性を上昇させるというものであった。こ
の結果は、メディア間の競争を促進させた方が良い作品が生まれる可能性が高いこ
とを示唆する。すなわち、メディア間の競争はコンテンツ制作にとって有用であ
り、創造性の芽を摘むものではない。